こんちにわぎょうざです。
今回は標準報酬月額の改定のルールについて解説したいと思います。
これを正しく理解することで社会保険料の計算についての知識も深まり、レベルアップ間違いなしです。
前回の記事では標準報酬月額の決定方法や4月から6月までの給料が重要であることを説明させていただきました。
この時期に残業することでかえって手取りの金額が減ってしまう可能性があることも分かったと思います。
まだ見ていない人は一度見てからこの記事を読んでいただくと理解が深まると思いますので是非ともご覧になって下さい。
-
-
標準報酬月額の決定方法の記事4月から6月の残業は損してしまうかも、、、。社会保険料の計算をマスターしよう
標準報酬月額は定時決定により毎年、標準報酬月額が変更されます。
そして基本的には、一度決定された標準報酬月額は1年間そのままです。
しかし、ある一定の条件に該当した場合には、標準報酬月額の改定というルールにより再計算を行なわなければならないのです。
そんな改定の制度について解説していきます。
それではいきましょー

標準報酬月額について勉強したばっかりで、頭がパンクしそうなのにさらにその先について勉強するの?

ニクマンちゃんならできるはずだよ!
今日話すことをマスターすると、もうひとつ成長したニクマンちゃんに生まれ変わることができるから頑張ってついてきてね。

生まれ変わるってことは、さらに磨きかかったかっこいい僕になれるってことだね。頑張るよ♪
本記事を読むとわかること
随時改定のルールについて分かる
随時改定になる場合とならない場合のルールが分かる
育児休業等終了時改定と産前産後休業終了時改定について分かる
大企業と中小企業の取り扱いの違いについて分かる
本記事の信頼性

ぎょうざ (@gyouza_maney)
この記事を書いている僕は、社会保険の専門家である社会保険労務士の資格を保有しており、現在は複数の会社を経営しております。
随時改定とは

報酬月額が大幅に変更になった時に再計算
冒頭で述べたとおり標準報酬月額は1年に1回、定時決定により変更されます。
しかし社会保険には随時改定というルールがあり、簡単言うと年の途中に昇給などが行われて、大幅に報酬月額が変更になった場合には標準報酬月額の再計算を行うというルールです。
随時改定は一般的には月額変更とも言われ会社では略して月変(げつへん)とも呼ばれています。

報酬月額は簡単にいうと会社からもらうお給料のことで通勤手当なども含まれます。
詳しくは前回の記事で解説してます。
この大幅な報酬月額の変更というのは、どれくらいなのでしょうか?
それは標準報酬月額の等級が2等級以上の差が出た場合です。

標準報酬月額の等級って、なんだっけ?

報酬月額の大きさによって標準報酬月額が変わるのを覚えているかい?
この大きさの区分を表したものが等級だよ。
復習も兼ねて、実際に等級の表を見てみようか。


思い出したのね。
まず報酬月額の金額の範囲を見て、その左隣が標準報酬月額の金額で一番左の数字がその等級の数字だったね。
それから等級には健康保険と厚生年金があってかっこ書きの数字は厚生年金の等級だった気が。

その通り!つまり2等級以上の差というのは例えば、健康保険の等級で10等級(上記の標準報酬月額でいうと134,000円)が12等級以上(上記の標準報酬月額でいうと150,000円以上)になったり、8等級以下(上記の標準報酬月額でいうと118,000円以下)になった場合が随時改定の対象になるということだよ。
随時改定の3つの条件
2等級以上の差が必要で意味もなんとなくわかったと思います。
これ以外にも条件がいくつかありますので、それは以下のとおりです。
随時改定の3つの条件
❶3か月連続して報酬月額を受け取り、その総額を3で割ったものが従前の標準報酬月額と比べ2等級以上の差があること
❷3か月連続して受けとった報酬月額の各支払基礎日数がどの月も17日以上あること
❸固定的賃金の変動があったこと

文章を読んでも2等級以上の差が必要であること以外よくわからないよ。

1つずつ解説していくから安心してね。
でもその前に必ず押さえておいてほしいポイントがあるんだ。
それは上記の3つの条件をすべてを満たさなければ、随時改定の対象にはならないということを覚えてね。
たとえば①と②は満たしているが③は満たしていない場合は随時改定の対象にはならないということだよ。
それでは上記の条件を1つずつ解説していきます。
条件❶2等級以上の差があること
まず❶についですが、3ヶ月続けて会社から給料をもらい、その3ヶ月の平均を出して以前と比べて2等級以上の差が出ている必要があるということです。
例を出すと、現在の標準報酬月額が20万円だとして、1月に22万円、2月に23万円、3月に21万円の場合は3ヶ月の合計は66万円になり、3で割ると22万円になります。
20万円と比べて2等級以上の差(昇格)が出ているので❶の条件にあてはまります。
また、1月に18万5千円、2月に19万、3月に18万の場合は平均で18万5千円の報酬月額になり、標準報酬月額の表であてはめると18万円の標準報酬月額になります。
20万円と比べ2等級以上の差(降格)が出ているので、この場合も❶の条件にあてはまります。
条件❷各月の支払基礎日数が17日以上あること
次に❷についてですが、報酬月額の各支払基礎日数が17日以上あるというのは、例えば月給制で一カ月22万円の給料を出していて、欠勤した場合は1日あたり1万円を控除する規定を定めていたとします。
この場合一日あたりの欠勤の額は月給の22分の1になりますね。
仮にその月に欠勤の額が6万円(22万円÷22×6日)が給料から引かれていた場合は、支払基礎日数は16日になり、17日以上の支払基礎日数を満たしていないことになります。

月給制の場合で欠勤がない場合は、支払基礎日数は各月の暦日(給料の計算期間)になります。
仮に20日締の会社で欠勤なしで月給22万円が出ている場合の2月給料(1月21日から2月20日)の支払基礎日数は31日になります。
条件❸固定的な賃金の変動があること
最後に③についてですが、固定的な賃金の変動があったことというのは、基本給や役職手当、通勤手当などが変わった場合ということになります。
言い方を変えると固定的な賃金はそのままで、固定的な賃金以外で変動があった場合には随時改定の対象にはならないということです。

固定的な賃金以外って何なの?

固定的な賃金以外を非固定的賃金といい、残業手当、歩合手当、稼動実績により変動する賃金が該当するよ
固定賃金はそのままで非固定賃金だけ変わった場合
冒頭でも少し述べましたが、4月から6月までに残業をすることで定時決定で標準報酬月額が上がってしまい、結果的に社会保険料があがり手取りが減少してしまう可能性があることについてですが、中には4月~6月までは残業しないかわりに7月からは残業をして給料の総額が増え、2等級以上の差が出た場合に随時改定の対象になるのではないかと疑問が生まれます。
勘の鋭い方は随時改定の対象にならないということが分かったのではないでしょうか。
そうです。固定的賃金がそのままで残業などの非固定賃金がいくら上がっても固定的な賃金の変動には該当しないので随時改定の対象にならないということです。
先ほどの①についての説明と同じ数字を使って具体例で見てみましょう。
現在の標準報酬月額と基本給が20万円だとします。
7月に22万円(基本給20万+残業手当2万円)、8月に23万円(基本給20万+残業手当3万円)、9月に21万円(基本給20万+残業手当1万円)の場合は3ヶ月の合計は66万円になり3で割ると22万円になり、総額でみると2等級以上の差が出ています。
しかし、内訳をみると基本給は3ヶ月間20万円のままなので、固定的賃金の変動がないと判断されることになり随時改定の対象にならないということです。

なるほど!だから、7月から残業しても改定がなく、社会保険料が増えないということになるんだね。

そうゆうことだね。
でも逆に考えると、4月から6月に残業をいっぱいして標準報酬月額が高くなってしまって、7月に残業せずに3ヶ月間報酬が低くなって総額に2等級以上の差が出たとしても、固定的賃金がそのままの場合は随時改定は行われないので、社会保険料は高いままになるから注意してね。
随時改定になる場合とならない場合の4つのケース
ここまでで随時改定の3つのルールについては理解できたと思います。
ややこしいのですが、①~③の条件に該当するが、随時改定になる場合とならない場合があります。
それは、固定的賃金と非固定賃金が上昇したり下降した場合で取り扱いが変わります。
実際に4つのケースがあるのでそれを見て随時改定になるかどうかの判断をしましょう。
①固定的賃金と非固定的賃金が上昇した場合
パターン1
固定的賃金・・・上昇
非固定的賃金・・上昇
〇随時改定の対象になります。
例)定時決定で4月~6月まで22万(基本給20万+残業2万)の報酬月額で標準報酬月額が22万だった。
7月~9月まで基本給と残業手当が上がり26万(基本給21万+残業5万)になった場合。
結果:報酬月額が22万から26万になり2等級の差があるので改定。
②固定的賃金が上昇し、非固定的賃金が下がった場合
パターン2
固定的賃金・・・上昇
非固定的賃金・・下降
×随時改定の対象になりません。
例)定時決定で4月~6月まで26万(基本給20万+残業6万)の報酬月額で標準報酬月額が26万だった。
7月~9月まで基本給が上がり残業が下がって22万(基本給21万+残業1万)になった場合。
結果:報酬月額が26万から22万になり2等級の差はあるが改定しない。
③固定的賃金と非固定的賃金が下がった場合
パターン3
固定的賃金・・・下降
非固定的賃金・・下降
〇随時改定の対象になります。
例)定時決定で4月~6月まで26万(基本給21万+残業5万)の報酬月額で標準報酬月額が26万だった。
7月~9月まで基本給と残業手当が下がり22万(基本給20万+残業2万)になった場合。
結果:報酬月額が26万から22万になり2等級の差があるので改定。
④固定的賃金が下がり、非固定的賃金が上昇した場合
パターン4
固定的賃金・・・下降
非固定的賃金・・上昇
×随時改定の対象になりません。
例)定時決定で4月~6月まで22万(基本給21万+残業1万)の報酬月額で標準報酬月額が22万だった。
7月~9月まで基本給が下がったが残業は上がり26万(基本給20万+残業6万)になった場合。
結果:報酬月額が22万から26万になり2等級の差はあるが改定しない。

ポイントは固定的賃金と非固定的賃金が逆の動きをしたら随時改定の対象にならないと覚えておきましょう。
随時改定のタイミング
変動が生じた月から4ヶ月目に改定
随時改定になるかどうかの判断が分かったので、今度はどのタイミングで改定されるか見ていきましょう。
改定のタイミングは昇給などにより、最初に報酬月額の大幅な変動が生じた月から4ヶ月目の月になります。
例えば、7月から固定的賃金が上昇し報酬月額に2等級の差が生まれて3ヶ月連続で続いた場合には、10月から新しい標準報酬月額になります。
ここで注意していおきたいのが、社会保険料は前月分を給料から差し引いているので実際に新しい標準報酬月額の社会保険料は11月分の給料からになります。
随時改定については以上になります。
育児休業等終了時改定とは

3歳未満の子の育児休業が対象
続いて、育児休業等終了時改定について解説していきたいと思います。
この改定は、社会保険の加入者に3歳未満のお子さんがおり、このお子さんを養育するために育児休業をしていて、休業から職場復帰する場合に報酬が低下していた場合に標準報酬月額を改定する制度です。

復帰後は残業が減ったり時短勤務をしたりして報酬月額が減少する場合が多いのでこの制度ができました。
例えば、休業前は標準報酬月額が24万円だったものが、職場復帰した時の報酬月額が20万円になった場合などが該当します。
その他の条件として以下のものがあります。
育児休業等終了時改定の3つの条件
育児休業等終了時改定の条件
❶育児休業等終了日の翌日から数えて3ヶ月が経過した日に在籍していること。
❷休業終了後、3ヶ月間の報酬月額の平均を計算する。
❸❷の計算で報酬支払基礎日数が17日未満の月がある場合はその月を除いて計算
条件としては定時決定の場合とよく似ています。
定時決定と同じように3ヶ月の期間を見て、その月で17日未満の月があった場合はその月を除いて計算するということです。
例えば、育児休業終了後の1ヵ月目の報酬月額が20万で報酬支払基礎日数が31日、2ヶ月目は報酬月額が15万で報酬支払基礎日数15日、3ヶ月目は報酬月額が18万で報酬支払基礎日数が18日の場合は、2ヶ月目の15万を除いて20万と18万の平均の19万が標準報酬月額になるということです。

パートさん(短時間就労者)の支払基礎日数の取扱いについては、3ヶ月のいずれも17日未満の場合は、そのうち15日以上17日未満の月の報酬月額の平均を出します。
育児休業等終了時改定のタイミングは?
育児休業等終了時改定のタイミングは、育児終了した日の翌日を起算月として、その月から4ヶ月目に新しい標準報酬月額になります。
例えば、1月20日に育児休業を終えた場合にはその翌日の1月21日が起算日となり、1月が起算月となり、4月から新しい標準報酬月額になります。
産前産後休業終了時改定とは

育児休業とルールは基本的に一緒
最後に産前産後休業終了時改定について解説します。
この改定は産前産後休業した社会保険の加入者が産前産後休業から職場復帰したときに報酬に低下がみられるような場合に標準報酬月額を改定する制度です。

産前産後休業って何なの?

産前産後休業とは、産前休業は出産の日以前42日(多胎妊娠の場合は98日)で産後休業は出産の日後56日の期間をいうんだよ。
また、出産予定日が出産日より後の日付の場合は産前の休業は出産予定日が起算日になるよ。
産前産後休業終了時改定の制度のルールは休業の種類が違うだけで、育児休業等終了時改定と基本的に一緒です。
ですので、育児休業等終了時改定のルールの中の育児休業等を終了した日の部分を産前産後休業をした日に読みかえるだけです。
当然改定のタイミングの考え方も育児休業等終了時改定と同じです。
育休と産休は1等級の差で改定できる
そして育児休業等終了時改定と産前産後休業終了時改定は、随時改定とはちがって、報酬月額の差に2等級以上の差がなくても改定できる
ということを覚えておいて下さい。
つまり、1等級の差でも改定できるということです。

補足知識として、育児休業等期間と産前産後休業期間の社会保険料は会社も被保険者も免除になります。
大企業と中小企業のルールの違い

社会保険加入の改正により17日未満が11日未満に
いかがでしたでしょか?
随時改定、育児休業等終了時改定、産前産後休業終了時改定について理解できましたでしょうか?
最後に一つ追加で覚えておいてほしいルールがあります。
途中で説明すると頭が混乱しやすいので、一通り説明してからと思い説明しませんでした。
社会保険の加入のルールが平成28年10月から大きく変わっています。
それは大企業の社会保険の加入ルールが中小企業の社会保険の加入ルールと違うことです。

ここでいう大企業の定義は501人以上の常用労働者がいる場合です。
簡単にいうと中小企業は週に30時間以上働く場合には基本的に社会保険の加入義務があるのですが、大企業の場合は週に20時間以上働く場合には加入しなければなりません。
他に1年以上雇用される場合や8.8万円以上の賃金があるなどのルールがありますが、中小企業と比べて加入条件が厳しいのです。
ですので、大企業の場合は週の労働時間が少なくなる場合でも加入義務が発生します。
そして大企業の社員で通常の社員より勤務日数や労働時間が短い人を特定適用事業者の短時間労働者というのですが、この人達は特別なルールがあります。
今まで見てきた3つの改定のルールの中で報酬支払基礎日数が17日未満の月は除いて報酬月額を計算するというルールがあったと思います。
この17日未満という部分が11日未満に変わると覚えておいて下さい。
中小企業の短時間労働者も人数規模に応じて大企業と同じ社会保険の加入条件になっていきますので、今は17日未満ですが今後は11日未満になると覚えておきましょう。

ちなみに社会保険の加入義務の人数要件が2022年10月からは101人以上になり2024年10月からは51人以上になります。
まとめ:社会保険料は生活において関わりが深いもの
それではまとめに入りましょう。
標準報酬月額の改定ルールのまとめ
・標準報酬月額は報酬月額が大幅に変更された時に再計算される。
・随時改定は3つの条件で行われ、❶2等級以上の差❷各月の支払基礎日数が17日以上❸固定的賃金の変動が条件
・固定的賃金がそのままで残業等の非固定賃金がいくら上がっても随時改定の対象にならない
・固定的賃金と非固定的賃金が逆の動きをしたら随時改定の対象にならない
・育児休業等終了時改定と産前産後休業終了時改定は❶休業終了翌日から3ヶ月が経過した日に在籍❷3ヶ月間の報酬月額の平均を計算❸17日未満の月を除いて計算の3つの条件がある
・育児休業等終了時改定と産前産後休業終了時改定は1等級の差でも改定される
・社会保険加入の改正により企業規模により17日未満の月の除外が11日未満に変更される場合がある
今回は3つの改定について解説していきました。
社会保険料は私達の生活の中で、関わりが深いものになります。
だからこそ制度を理解することが重要だと私は思っています。
改定は不定期で行われ、会社にお勤めになっている方はこの制度に遭遇する機会があるかもしれません。
もし遭遇した場合はこの記事を思い出して下さい。
社会保険の制度は難しいと思われがちですが、一つ一つ分解していくことで理解できるようになると思います。
今回の記事が少しでも役に立てば嬉しいです。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。