
人にお金やものをあげると税金がかかるって聞いたことがあるんだけどそれってほんとなの?
こんなお悩みを解決いたします!
本記事を読むとわかること
3つの贈与の種類についてわかる
贈与財産として加算されるものと差し引かれるものがわかる
贈与税の計算方法がわかる
贈与税の5つの特例についてわかる
本記事の信頼性

GYOUZA (@gyouza_maney)
この記事を書いている僕は、お金の専門家であるファイナンシャルプランナーの資格を保有しており、現在は複数の会社を経営しております。
自分が今後どうなるかわからないから、家族にある程度お金を残したい。
仲の良い友達や、可愛い後輩のためにお金の工面をしてあげたい。
そんなふうに考えていらっしゃる人もいるのではないでしょうか?
実はお金を誰かにあげることで、もらった人は贈与税という税金を払わければならないケースが発生するのです。
今回は、贈与税についてわかりやすく解説していきます。
それではいきましょー
贈与の定義と注意点

生存している誰かから財産をもらう契約
贈与税の説明の前に贈与とはどういったものなのかを考えてみましょう。
贈与とは、生きている個人から財産をもらうことです。
そして、贈与をする際に「あなたに〇〇を渡しますよ」という契約を結びます。
この契約のことを贈与契約と言います。

「僕の大事なニクマンをあなたにあげますよ」みたいなことだね。

うん。意味は間違ってないよ
この契約は書面でも口約束でも構いません。
ただし、注意しなければならないのが、書面の贈与契約は撤回することができません。
一方で口頭での贈与契約だと撤回することができます。
しかし、財産を贈与した後の場合は撤回することができませんので注意しましょう。

ちなみに贈与をする人を贈与者といい、贈与を受ける人を受贈者と言います。
3つの贈与の種類

贈与についてもう少し深く見ていきましょう。
実は贈与にはその都度贈与をする通常の贈与以外に3つの贈与の種類があります。
❶定期贈与
❷負担付贈与
❸死因贈与
贈与の種類① 定期贈与
定期贈与は、言葉の通り定期的に贈与をすることです。
例えば、父親が子供に1000万円の金銭を贈与しようと考えていて、それを10回に分けて父親が毎年100万円のお金を贈与するなどが該当します。

毎年100万円分の肉まんがもらえたら、どれだけ幸せななんだろう♪
贈与の種類② 負担付贈与
負担付贈与とは、贈与者が受贈者者に対して一定の義務を負わせる贈与になります。
簡単にいうと

5000万円の不動産をあげる代わりに借金2000万円分も引き継いでね
みたいな感じです。つまり財産を贈与する条件として、借金などの制約がついてくる贈与だと思っていただければ大丈夫です。
贈与の種類③ 死因贈与
死因贈与とは、贈与者の死亡によって効力が生じる贈与のことをいいます。
例えば、

わしが死んだらこの家は、お前にあげよう
みたいな感じです。
但し、贈与者が亡くなる前に受贈者が亡くなってしまうとこの贈与契約はなかったものになってしまいます。
この死因贈与は後述する贈与税の支払いの対象にはならず相続税の支払いの対象になるので覚えておきましょう。
贈与税の計算
贈与についてある程度はわかったと思いますので、ここから本題である贈与税について解説していきましょう。
贈与税とは、贈与により財産を取得した人にかかる税金のことです。
そして、贈与税は毎年1月1日から12月31日までの1年間の期間中に、一定の条件に該当した場合には贈与税という税金を支払わなければなりません。
贈与された財産に税金を課すために課税価格というものを算出します。
課税価格は以下の式で求めることができます。
課税価格
課税価格=贈与財産として加算されるもの-贈与財産から差し引くもの
贈与財産として加算されるものとして以下の2つがあります。
❶本来の贈与財産
❷みなし贈与財産
贈与財産として差し引くものには非課税税財産というものがあります。
では1つずつ解説していきます。
加算されるもの❶ 本来の贈与財産

本来の贈与財産とは、贈与によって取得した財産で、金銭的に評価できるもので経済的な価値があるものになります。
具体的には預貯金、不動産、株式などがあります。
例えば、預貯金が500万円、不動産が1000万円、株式が500万円の場合は、本来の贈与財産は2000万円になるということです。
加算されるもの❷ みなし贈与財産

みなし贈与財産は、本来は贈与財産ではないが、実質的には贈与を受けた効果があると判断された贈与財産のことをいいます。
例えば、不動産を1000万円分で譲り受けたけれど、時価でその不動産の価値を見ると3000万円だった場合に、譲り受けた価格と時価との差額の2000万円がみなし贈与財産として取り扱われるということです。

この場合、実質2000万円の贈与を受けたの同じ効果があると言えますね。
みなし贈与財産は他にも、保険料を払っていないのに生命保険の保険金を受け取った場合や親が子供に500万円貸したけれど、返済は100万円でいいといった場合(この場合は400万円がみなし贈与財産)が該当します。

子供の税金を親が肩代わりした場合もみなし贈与財産に該当してしまいます。
差し引かれるもの① 非課税財産

非課税財産は名前のとおり、贈与税がかからない贈与財産です。
以下に掲げるものは非課税財産としてして扱われます。
❶法人からの贈与財産
❷扶養義務者から受け取った生活費や教育費
❸香典、ご祝儀、お中元
❹公益を目的にした事業用に受け取った財産
❺相続開始の年に被相続人から受け取った贈与財産
❶の法人からの贈与財産ですが、贈与税の対象になるのは、あくまでも個人からの贈与財産になります。
ですので、法人は会社であるため贈与税の対象からは外れるのです。
しかし、所得税はかかってくるので注意が必要です。
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❷の扶養義務者から受け取った生活費や教育費ついてですが、これは親が子供に通常の生活で必要である生活費や学費などの教育費に対しては贈与税はかからないということです。
例えば、大学生の子供に対して仕送りなどをした場合でも、それは生活する上で必要なものと判断されるため贈与税の対象にはなりません。
但し、仕送りが教育費や生活費のためではなく投資にまわす目的などの場合は贈与税の課税対象になるので注意しましょう。
また毎月仕送りをするのではなく、大学の4年間分の学費を、例えば500万円分まとめて子供に送金した場合などは贈与税がかかってしまう恐れがありますのでその点も注意が必要です。
❸の香典、ご祝儀、お中元についてですが、冠婚葬祭で発生する祝い金や香典などは基本的には贈与税の対象外になります。

結婚資金を両親が支払った場合でも、それは祝い金として扱われ、あまりにも高額ではない限り非課税になります。
❹の 公益を目的にした事業用に受け取った財産 とは、宗教・慈善・学術その他公益を目的とする事業を行う者が贈与を受けた場合は贈与税の対象外になります。
しかし、もらった財産を2年以内にその公共事業のために使わなければいけないという制約があります。
❺の 相続開始の年に被相続人から受け取った贈与財産 とは、贈与をした人が贈与をした年に亡くなった場合には、その贈与財産は非課税になります。
但し、この場合は相続財産として加算されるので相続税の対象になります。

相続税には生前贈与加算という制度があり、亡くなった日から遡って3年以内に贈与された財産は相続財産として加算され贈与税ではなく相続税の対象になります。
ここまでをまとめると、仮に本来の贈与財産が2000万円、みなし贈与財産が1000万円、非課税財産が500万円の場合、課税価格は2500万円になるということです。

課税価格が110万円以内なら贈与税は0円

課税価格について理解できたと思いますので、次に基礎控除について解説します。
贈与税には基礎控除という項目があり、課税価格から差し引くことができます。
そしてその金額は年間で110万円になります。
つまり、課税価格が110万以内なら贈与税はかからないという結論になります。

じゃあ、おじいちゃんから100万円をもらったとしても贈与税はかからないってことだね。
贈与税の税率は2種類ある
では、ここからは贈与税の税率をみていきましょう。
贈与税の税率は2種類あり、一般税率と特例税率という種類があります。
特例税率の方が一般税率より税率が低くなっており、特例税率を適用するには以下の2つの条件に該当しなければなりません。
特例税率の適用条件
❶その年の1月1日において20歳以上であること
❷父母や祖父母など直系尊属から贈与を受けたこと
それでは上記をふまえた上で贈与税の速算表をみてみましょう
令和3年4月1日現在
基礎控除後の課税価格 | 一般税率 | 特例税率 | ||
税率 | 控除額 | 税率 | 控除額 | |
200万円以下 | 10% | 0円 | 10% | 0円 |
300万円以下 | 15% | 10万円 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 | ||
600万円以下 | 30% | 65万円 | 20% | 30万円 |
1000万円以下 | 40% | 125万円 | 30% | 90万円 |
1500万円以下 | 45% | 175万円 | 40% | 190万円 |
3000万円以下 | 50% | 250万円 | 45% | 265万円 |
4000万円以下 | 55% | 400万円 | 50% | 415万円 |
4500万円超 | 55% | 640万円 |
では実際に速算表を使って計算してみましょう。
仮に18歳の子供が投資資金として自分の父親から500万円円の現金の贈与を受けたとします。
この場合、課税価格が500万円で基礎控除の110万円を控除すると390万円になるので、上記の表の400万円以下の行を見ます。
そして20歳以上ではないので一般税率の列を見ます。
計算すると贈与税額は以下のとおりになります。
贈与税額(一般税率)=53万円※
※計算方法=390万円×20%−25万円
同じ条件で20歳以上の子供の場合は、直系尊属の父親から贈与されたことになるので、特例税率の要件に該当し計算すると以下のとおりになります。
贈与税額(特例税率)=48万5千円※
※計算方法=390万円×15%−10万円

同じ金額の贈与なのに特例税率になるだけで4万円5千円も税金が変わってくるんだね。
贈与税の特例制度

最後に贈与税の特例制度について解説していきたいと思います。
特例制度は以下のとおりです。
❶贈与税の配偶者控除
❷相続時精算課税制度
❸直系尊属から住宅取得等資金の贈与
❹直系尊属から教育資金の一括贈与
❺直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与
特例❶ 贈与税の配偶者控除
配偶者から居住用不動産などの贈与を受けた場合で、一定の条件を満たした場合には2000万円を上限として基礎控除後の課税価格からさらにその金額を控除することができます。
例えば、居住用不動産が1500万円だった場合は1500万円の控除になり、逆に3000万円だった場合は上限の2000万円になるということです。
一定の条件は以下のとおりです。
配偶者控除の要件
・婚姻期間が20年以上あること
・居住用の不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与であること
・贈与を受けた年の翌年の3月15日までにその居住用不動産に居住し、その後も居住すること
・贈与税が0であっても贈与税の申告書を提出すること
・同じ配偶者から一生のうち1回限り

贈与税の申告書は税務署か国税庁のHPで入手できます。
特例❷ 相続時精算課税制度
相続時精算課税制度とは、親から子供への財産を早い段階で移せるように、贈与時の税金を軽減する目的に作られた制度です。
具体的には2500万円までは非課税として取り扱い、2500万円を超える金額は一律で20%の贈与税を徴収する制度です。
この制度は、名前の通り相続の時に税金を精算する制度なので、2500万円まで税金がかからないという解釈ではなく、2500万円までは税金の支払いは相続の時までかからないということです。
この財産は相続の時に相続財産として加算されるので、税金は相続の時に相続税として徴収されます。
詳しくは下記の記事をご覧下さい。
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相続税の計算ってどうするの?誰でも分かるように優しく解説します!
相続時精算課税の要件は以下のとおりです。
相続時精算課税の要件
・贈与者は60歳以上の親および祖父母であること
・受贈者は20歳以上の子である推定相続人および孫であること
・贈与財産が住宅取得等資金の場合は60歳未満の親および祖父母でもよい
・最初に贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までに相続時精算課税制度選択届出書を提出すること

相続時精算課税制度は選択の制度なので、通常通りの贈与税としての支払うこともできます。
但し、一度選択すると戻れないので注意が必要です。
特例❸ 直系尊属から住宅取得等資金の贈与
直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた人は、一定の条件を満たすと一定の金額を基礎控除後の課税価格からさらにその金額を控除することができます。
2020年4月1日から2021年12月31日までの期間に省エネ等住宅取得のための資金の場合は1500万円、それ以外の住宅取得の場合は1000万円までの非課税限度額を適用することができます。

上記の住宅は新築で消費税率が10%である必要があります。
例えば中古の住宅の場合、省エネ等住宅は1000万円、それ以外の住宅は500万円になります。
特例❹ 直系尊属から教育資金の一括贈与
直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた人は、一定の条件を満たした場合には1500万円を上限として基礎控除後の課税価格からさらにその金額を控除することができます。
教育資金一括贈与の要件
・2013年4月1日から2023年3月31日までの贈与であること
・受贈者が30歳未満でかつ前年分の所得税の合計所得金額が1000万円以下あること
・学校等の入学金や授業料、通学定期代、留学費などの教育資金であること
・教育資金一括贈与の申告書を金融機関を経由して、受贈者の納税地の税務署に提出
学校等に支払われる入学金や授業料等の場合は最大1500万円の非課税の枠を使えることができますが、塾や習い事のなどのお金は上限額が500万円になります。
また23歳を過ぎた日の学校外の習い事にかかる費用に関しては非課税の対象にならないので覚えておきましょう。

教育資金の一括贈与の特例は、教育資金口座というものを開設することになるのですが、受贈者が30歳に到達した時点でその口座に資金が残っておりお金を使いきれなかった場合には残額に対して贈与税がかかるので注意が必要です。
特例❺ 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与
直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた人は、一定の条件を満たした場合には1000万円を上限として基礎控除後の課税価格からさらにその金額を控除することができます。
教育資金一括贈与の要件
・2015年4月1日から2023年3月31日までの贈与であること
・受贈者が20歳以上50歳未満であること
・結婚費用、新居の住居費、妊娠、出産、子の育児に関する資金であること
・結婚・子育て資金の一括贈与の申告書を金融機関を経由して、受贈者の納税地の税務署に提出

結婚に関する費用は上限が300万円になっていますので注意しましょう。
まとめ:贈与税は相続税を補完する制度
いかがでしたでしょうか?
贈与税は、特に家族間での財産のやり取りで発生するイベントになっています。
税金の計算自体はそこまで難しくないと思います。
それではまとめに入りましょう。
まとめ
通常の贈与の以外に定期贈与、負担付贈与、死因贈与がある
本来の贈与財産とみなし贈与財産を足して非課税財産を差し引くと課税価格になる
課税価格から基礎控除110万円を差し引いたものに対して税金がかかるので、110万円以下は贈与税はかからない
税率は2種類あり、20歳以上で直系尊属からの贈与の場合、税金が安くなる
贈与税の特例制度は6つあり、うまく活用することで節税できる
実は贈与税は、亡くなった人の財産を引き継いだ時にかかる相続税を補完する目的で課税されるものです。
ですので、贈与税と相続税は密接な関係であると言えます。
相続に関しては過去の記事でいくつか書いていますので、もう少し深く勉強したいと思われる方は是非ご覧下さい。
相続の記事はこちら
少しでもこの記事が参考になれば嬉しいです。