
有給のルールっていっぱいあるの?
注意しておくことってあるの?
こんなお悩みを解決いたします!
本記事を読むとわかること
有給の制度について理解できる
有給の取得日数や計算方法について理解できる
有給で勘違いしやすいポイントについて理解できる
本記事の信頼性

ぎょうざ (@gyouza_maney)
この記事を書いている僕は、労務の専門家である社会保険労務士の資格を保有しており、現在は複数の会社を経営しております。
有給は働いている労働者にとって、大切な権利です。
だからこそ有給について正しく理解する必要があります。
この記事では、有給のルールについてわかりやすく解説していきます。
有給には実は様々なルールがあり、勘違いされやすいポイントがいくつかあります。
この記事を読んで有給についてしっかりマスターしましょう。
それではいきましょー
有給の基礎知識について

有給の正式名称は年次有給休暇
社会人の皆さんは、有給という言葉に馴染みがあると思いますが、有給の正式名称は年次有給休暇と言います。
会社によっては、有休、有給、年休など様々な呼び方がありますが、結論は年次有給休暇のことなのでそこまで気にすることはないと思います。
厚生労働省のHPや、年次有給休暇についての本や資料でも略称として上記の有休、有給、年休などが使われることが多いです。
この記事でも、年次有休休暇を有給という略称で説明していきますのでご了承下さい。

有休と有給は有給休暇の略、年休は年次有休休暇の略になります。

呼び方を統一してくれないと、少し混乱してしまうのねん。
有給とは労働者の権利
有給は働いている労働者さんの大切な権利になります。
労働基準法にも定められており、一定の条件を満たすと労働者である限り誰でも使える権利になります。
労働基準法第39条に以下のように書かれています。
労働基準法第39条
使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

もう少し簡単に説明してほしいのねん

簡単に言うと会社に入社して、欠勤がほとんどなく、6ヶ月が経過したら10日の有給が付与されるってことだよ。
欠勤がほとんどなくというのは、例えば6ヶ月で130日は会社に出勤しないといけない場合に、出勤率が80%以上(この場合は104日以上【130日×80%】)であれば有給が付与されるってことです。
ですので、労働者さんのほとんどが有給の権利が法律で付与されているので、それを理解しておきましょう。
勤続年数に応じて有給の日数は増えていく
入社して6ヶ月を経過すると有給が10日間付与されることは分かりました。
ではその後、会社で勤務し続けるとどうなっていくのでしょうか?
結論は、6ヶ月経過後、1年ごとに有給が毎年付与されて、付与される有給の日数も増えていきます。
つまり、入社して1年6ヶ月後に2回目の有給が付与され、その後2年6ヶ月後、3年6ヶ月後というように毎年有給が付与されていきます。
勤続年数に応じた有給の日数の以下のように変化していきます。
上の表を見ていただければ分かるのですが、勤続年数応じて有給の付与日数も増えていきます。

2.5年までは1日ずつ増えていきますが、3.5年以降は2日づつ増えていきます。
但し、毎年有給が付与されて、付与日数も増えるのですが、勤続年数が6年6ヶ月以上勤務した場合は、有給の付与日数は20日で頭打ちになり、それ以上の日数が増えることはありません。
つまり7年6ヶ月勤続した場合でも、その年の付与日数は20日になりますし、20年6ヶ月勤続しても付与日数は20日になります。

6年と6ヶ月以上の期間は、20日と覚えておいたらいいんだね♪
出勤率が8割に届かなかった場合の有給は?
もう1つ覚えておいてほしいことがあります。
それは、先ほど有給の権利を取得するためには、出勤率を80%以上満たす必要があると説明させていただきました。
このルールは6ヶ月経過後の1年ごとの有給の付与にも適用されますので注意が必要です。
例えば、初めの6ヶ月は8割以上出勤したけれど、その後の1年の出勤率は8割に達することができなかった場合です。
この場合は、初めの半年で10日間の有給が付与されますが、次の1年では8割に届いていないので本来もらえる11日間の有給は付与されません。

それはつらいのねん、、。
しかし、この場合であっても勤続年数は増えることになります。
どうゆうことかと言いますと、仮に出勤率が8割に届かず、1年6ヶ月時点で11日間の有給はもらえなくても、翌1年間の出勤率が8割以上だった場合は、12日間(2年6ヶ月時点)の有給は付与されるということです。
つまり、いくら休んでも勤続年数は加算され、その勤続年数に応じて有給の付与日数は判断するということです。

極端な例として入社して5年6ヶ月まではずっと出勤率は8割に届かなかったが、5年6ヶ月から6年6ヶ月までの1年間の出勤率が8割以上である場合は、6年6ヶ月が経過した日に20日間の有給が付与されるということです。
有給の勘違いされやすいポイント5選

有給について基本的なことは、ご理解いただけたと思うので、ここからは有給の勘違いされやすいポイントについて5つ解説していきたいと思います。
初めに、まず結論を以下に書きます。
勘違いされやすい5つのポイント
❶アルバイトでも有給がある
❷時間単位でも有給が取れる
❸有給の単価の出し方は1つではない
❹有給の日を会社が指定することができる
❺有給を使わないと勝手に消滅する
勘違いポイント①アルバイトの有給について
まず1つ目の勘違いされやすいポイントとして、アルバイトの有給についてです。
アルバイトの場合は有給が付与されないと思い込んでいる人が意外に多いのが現状です。
実際はアルバイトであっても、ちゃんと有給を取得する権利があるのです。
アルバイトの多くは正社員の人達と比べて労働時間が少ないと思います。
中には週に1回の勤務のアルバイトの人もいると思います。
しかし、労働基準法には、労働時間が少ない一定の労働者に応じた有給のルールがあるのです。
そのルールの名前を、比例付与と言います。
この比例付与のルールにあてはまる人は以下の2つの要件を満たす人達です。
比例付与の条件
❶週の労働時間が30時間未満である人
❷週の労働日数が4日以下又は年間労働日数が216日以下の人
この条件に当てはまるアルバイトさんは、以下の表のように有給が定められています。
表を見ると、通常の有給と比べ日数が少ないですが、アルバイトであっても上記の表の日数分の有給の権利が発生していることになります。
仮に週に2回で6ヶ月が経過した場合には3日間の有給を請求する権利が法律で認められていますので、会社に請求するようにしましょう。

ちゃんと権利としてあるもだから、請求しないともったいないのねん。
逆に上記に該当しない、週に30時間以上働いたりするアルバイトや週に5日以上出勤するアルバイトの場合は通常の有給のルールが適用され6ヶ月経過後に10日の有給が付与されます。
勘違いポイント②有給の取得単位について
2つ目の勘違いされやすいポイントですが、それは有給の取得単位についてです。
有給を取得できる単位は1日しかないと思われる人も多いのですが、実は時間単位でも有給を取得することができるのです。
例えば、午前8時から午後5時までの仕事だとして、午前の8時〜12時までが午前の仕事、12時〜午後1時までの1時間は昼休憩、午後1時から午後5時までが午後からの仕事だとしましょう。
この場合、午前の仕事だけして、午後の仕事しないで、有給として消化することができるのです。
この場合、有給の消費の単位は0.5日になります。

この例だと、通常の労働時間は8時間で、午後の4時間分の労働を有給に変えたと考えるので、4時間÷8時間で0.5日になります。
細かく言えば、1時間分の労働時間や2時間分の労働時間でも有給として使用することもできます。
但し、この時間単位の有給を利用する場合には以下のような条件があります。
時間単位の有給について
❶労使協定を結ぶ必要がある
❷時間単位で取得できる日数は1年間で5日以内
この制度を利用するには、労使間で結ぶ労使協定を結ばなければいけません。この労使協定には、この時間単位の有給を使える労働者の範囲や1日の有給は何時間分に相当するかなどを定めなければいけません。

この労使協定は労働基準監督署に提出する必要はありません。
またこの時間単位の有給を使える範囲も、決まっておりそれは1年間で5日以内までとなっています。
仮に有給の使用できる日数が15日間あるとした場合には、このうち最低でも10日間は1日単位で取得しなければいけないということです。
時間単位の場合は最大でも5日までしか使えないことも頭に入れておきましょう。
勘違いポイント③有給の単価の計算について
3つ目は、有給の単価の計算についてです。
有給の単価の計算方法も1つしかないと思われている人も多いのではないでしょうか?
実は有給の単価の計算方法は以下の3つがあります。
有給の単価の計算方法
❶通常の賃金で支払う方法
❷平均賃金で支払う方法
❸標準報酬日額で支払う方法

上記のうち、どの計算方法にするかは、あらかじめ就業規則に定める必要があります。
①の通常の賃金で支払う方法とは、簡単にいうと言うと有給をとったしても、いつも通りの給料を支払う方法です。
この方法が多くの会社で採用されていると思います。
通常、会社を休んでしまうとその分、給料が減額がされると思うのですが、この方法だと減額されずにそのまま支給するといった感じです。
②の平均賃金で支払う方法ですが、これは労働基準法の平均賃金の出し方と同じやり方になります。
平均賃金は、原則として発生日(この場合は有給の取得日)から遡って3ヶ月の間に支払われた賃金の総額をその期間の総日数(休日を含んだ歴日数)で割ったものが平均賃金になります。
例えば、賃金の締日が20日締めの会社だとして、4月30日に有給を使った場合は、3月21日〜4月20日の期間(総日数は31日)の賃金、2月21日〜3月20日の期間(総日数は28日)の賃金、1月21日〜2月20日の期間(総日数は31日)の賃金の総額を総日数の90日で割って求めたものになります。
仮に毎月定額で30万円だった場合は、90万円÷90日で割った1万円が平均賃金になります。
この平均賃金で計算した単価が有給の金額になります。

例外として賃金の額が時間額や日額、出来高給で決められている場合で労働日数が少ない場合などは賃金の総額を労働日数で割った60%に当たる額の方が高い場合はその額が平均賃金になります。
③の標準報酬日額で支払う方法ですが、これは健康保険の保険料の算出で使う標準報酬月額を30日で割った金額になります。
標準報酬月額については別の記事で詳しく書いていますのでそちらをご覧下さい。
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4月から6月の残業は損してしまうかも、、、。社会保険料の計算をマスターしよう
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標準報酬月額の改定のルールを理解しよう!3つの改定と注意点も解説!
簡単にいうと毎年4月から6月の給料の平均で算出されるものです。
仮に標準報酬月額が30万円だった場合は、これを30で割るので標準報酬日額は1万円になり、これが有給の単価になります。
但し、この標準報酬日額の計算を採用するためには、労使協定を結ぶ必要があります。

標準報酬日額を採用することで、労働者の有給が不利になるケースもあり得るのでこうした労使協定を結ぶ必要があります。
また労使協定は労働基準監督署に提出する必要はありません。
勘違いポイント④有給の日の指定について
勘違いされやすいポンイントの4つ目は、有給の日の指定についてです。
有給は自分で好きなタイミングで取得できると思われている人もいるのではないでしょうか?
基本的には有給を取得する日については、労働者自身が決めることができます。
しかし、労働基準法に時期変更権とという使用者側が行使することができる権利があります。
これは、簡単に言うと労働者が有給を取ることによって、会社の運営が困難になる場合などは別の日に有給を指定することができる権利です。
例えば、ある労働者が有給を取りたい日が、たまたま人数が少なくその労働者が休むことで事業が運営できなくなる場合などは、違う日に有給をとるように使用者側が言えるということです。
また、有給には計画的付与制度という制度があります。
これは、有給の日数のうち5日を超える部分は、就業規則に明記した上、労使協定を結ぶことにより会社が指定することができる制度です。
簡単にいうと、労働者の有給の日数のうち5日間は労働者の自由にとることができるけれど、それ以上の日数分は会社が有給を使う日を指定できるということです。

自分の有給の日は、全て自分で決めたいのねん、、。
この制度の経緯としては、日本人の風習として会社に遠慮してしまい、なかなか有給を使わない人が多いのが現状なのです。
それもあって、こういった制度を設け、有給の消化を促進したのです。
しかし、それでも有給の消化が促進されない会社が多かったので、平成31年の4月から有給が年間に10日以上付与される労働者に対して、使用者が5日分の時期を指定して年休を取得させるように罰則付きで義務化されました。
要するに、有給が10日以上発生している労働者の有給が年間に5日間消化できていない労働者がいる会社は、罰則を与え処分しますよということです。

違反した場合は、1人あたり30万円以下の罰金になります。
こうした有給の日の指定に関する様々なルールがあるので、しっかり覚えておきましょう。
勘違いポイント⑤有給の時効について
勘違いされやすいポイントの最後の5つめは、有給の時効についてです。
有給は一度発生したら、一生使える権利であると思われている方は、要注意です。
有給の権利には、時効があり、その権利を使わなければそれが消滅してしまうのです。

どれくらいの期間で消滅してしまうの?
有給の時効の期間は2年になります。
つまり、有給が発生して2年間使わなければ、せっかく権利として手に入れた有給を手放すことになってしまうのです。
例えば、入社して6ヶ月で10日の有給が発生し、5日間は有給を使ったが、残りの5日は使わなかった場合には、その2年後の入社してから2年6ヶ月経過の時点で初回の使わなかった5日間が消滅してしまいます。
仮にその後に、残していた5日間の有給を請求しても時効でなくなっているため請求することができなくなります。
ですので、有給は早めに消化することを推奨します。
逆に2年間は有給は消滅しないので、1年目はあまり有給が取れなかったとしても、その分の有給は自分の残日数として残っているので2年目に多く使うことはできます。
なかには、有給を買い取ろうとする会社があるかもしれませんが、有給を買い取ることは違法になります。
但し、時効で消滅した有給を買い取ることは法律上に問題はありません。
先ほど、会社が労働者に有給を5日間取得させないと罰則があると説明しましたが、この制度があるからといって安心してはいけません。
というのも、毎年5日間しか消化していない場合には、古い有給は消滅してしまうことになるので自分で意識して有給を取ることを心がけるようにして下さい。

自分自身で有給の日数の管理をしっかりしておきましょう。
まとめ:有給は労働者の大切な権利だからこそ理解をする
それでは最後にまとめに入りましょう。
有給のまとめ
・有給の正式名称は年次有給休暇で8割以上の出勤で6ヶ月継続勤務すると付与される権利
・6ヶ月経過後は1年ごとに有給の日数が年々増え、6年6ヶ月で20日が付与される
・有給は比例付与の制度があり、アルバイトでも有給が付与される
・有給は1日単位ではなく1時間単位でも取得することができる
・有給の単価の計算が3つあり、通常の賃金、平均賃金、標準報酬日額がある
・有給には時期変更権と計画付与の制度があり、会社が有給の日を指定できる
・平成31年4月から有給が10日以上発生している労働者に対して5日間消化させていない会社は、処罰される。
・有給の時効は2年であり、消化しないと消滅する
いかがでしたでしたでしょうか?
有給にも、多くのルールがあることがご理解いただけたと思います。
一度、自分の会社の就業規則などを確認して、有給のルールがどうなっているかを確認してみて下さい。
有給の知識は、会社員として働いている以上、絶対に知っておかなければならないものだと僕は思います。
有給は労働者の大切な権利だからこそ、その権利を自ら意識をして使うことが大事だと思います。
休みを取らずに働くことは、側から見ると努力して頑張っていると思われがちですが、本当に仕事ができる人は適切な休みもしっかり取っていると僕は思います。
しっかりリフレッシュすることで、仕事の生産性も上がるはずです。
少しでもこの記事は参考になれば嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。