
いくらの売上で会社は黒字になるの?
こんなお悩みを解決いたします!
本記事を読むとわかること
損益分岐点について理解できる
損益分岐点売上高の計算手順について分かる
損益分岐点売上高の計算の応用方法や活用法が分かる
本記事の信頼性

ぎょうざ (@gyouza_maney)
この記事を書いている僕は、経営に関する資格を多数保有しており、現在は複数の会社を経営しております。
会社の経営に携わっている人は、日々会社の売上に対して考えている人も多いのではないでしょうか?
また営業の人は会社から毎月、売上に対するノルマに課せられる人もいると思います。
しかし、売上に対して利益がいくらになるかを把握している人は意外に少ない気がしています。
また売上がいくらになったら会社は黒字になるか、若しくは赤字になるかを理解している人も少ないのではないでしょうか?
今回の記事ではそんな悩みを解決できる方法を解説していきます。
それではいきましょー
損益分岐点:利益が0になる所

【利益の出し方】売上から費用を差し引く
会社が黒字か赤字かを判断するために利益の出し方について学ぶ必要があります。
利益を求める計算式は単純で以下のようになります。
利益=売上-費用
とてもシンプルな式なので誰でも理解できると思います。
例えば、会社の売上が1000万円で費用が700万円の場合は300万円の利益になりますし、売上が1000万円で費用は1200万円の場合はマイナス200万円の赤字になります。

これぐらいなら僕でも分かるのねん♪
売上と費用さえ分かれば、会社が黒字か赤字なのかは誰でも判断できると思います。
実際に会社の損益計算書という会計書類を見ると会社が黒字か赤字かが分かります。
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起業したい人は必見!会社の利益は一つじゃない!損益計算書をわかりやすく解説
しかし、問題なのはこういった書類を見ることで利益がいくらなのは分かるのですが、この場合はあくまでも事後的に利益がどうなったかを把握できるのであり、あらかじめいくらの売上を確保すればどれだけ利益が出るかというのことがわかりません。
やはり経営する上で大切なのは、事前にどれだけの売上を確保するば黒字になるのかを把握する必要があると思います。
【損益分岐点売上高】損益が0になる売上高
ではここからは、事前に黒字になるかを把握するための方法を具体的に見ていきましょう。
黒字になる売上を把握するためにも、売上から費用を引いた数字が0になる所を探さなければなりません。
この売上から費用を引いて0になるポイントを損益分岐点と言います。
そして、その0になる所の売上を損益分岐点売上高と言います。
例えば、売上が1000万円で費用も1000万円の場合は差し引きが0になるので、この場合は1000万円の売上高が損益分岐点売上高になります。
この損益分岐点売上高を把握することができれば、ノルマの設定や会社が利益を出すために必要な販売量を事前に把握することができます。
損益分岐点売上高の計算方法

損益分岐点売上高を把握するには以下のステップで計算していきます。
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1固定費と変動費にグループ分け
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2変動費率の算出
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3固定費を算出
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4限界利益率を算出
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5固定費を限界利益率で割り算
ステップ①費用を固定費と変動費に分解する

損益分岐点売上高を把握する上で一番大切なことは費用がいくらかかるのかを把握することです。

費用は毎月、変わるから求めることは難しいんじゃないの?
確かに費用は毎月のように変動するのが普通だと思います。
しかし、この費用をよくよく覗いて見ると費用が固定されているものと変動するものとで分かれています。
費用が固定されているものを固定費といい、例えば会社の家賃、固定給の人件費、水道光熱費、リース代などが該当します。
一方で費用が変動するものを変動費といい、例えば販売手数料、材料費、仕入原価などが該当します。
ですので、まずは費用を見て固定費と変動費のグループ分けをしていきます。
ステップ②変動費率を求める
変動費は売上や販売量の大きさに合わせて変動するもので、例えば100円の肉まんを販売するとして、1つ販売するたびに材料費が40円かかるとします。
この場合、2個の肉まんを販売した場合は80円(40円×2個)の材料費がかかり、5個販売すると200円(40円×5個)の材料費がかかることになります。
つまり、販売の量に応じて材料費も上がっていくことになります。
そして損益分岐点売上高を計算するには、この変動費が売上に対してどれくらいの割合であることを求める必要があります。
この割合のことを変動費率と言います。
この肉まんの変動費率は100円に対して40円の変動費がかかっているので変動費率は40%になります。

材料費40円÷売上高100円=40%になります。
もちろん肉まん以外の製品でも、変動費はありますので気になる人は自分の会社の製品の変動費を調べてみてください。
ステップ③固定費を算出する
次のステップは固定費を算出します。
同じように肉まんの会社だとして、今度は材料費以外の家賃、水道光熱費や人件費などの固定費を出す必要があります。
例えば1ヶ月の家賃が10万円、人件費は1ヶ月で3人の雇用が必要で、1人あたり時給が1000円だとしましょう。
そして3人の1ヶ月の労働時間は1人あたり150時間だとします。
そうすると人件費は45万円(1000円×150時間×3人)になります。
さらに1ヶ月の水道光熱費は月に2万円、肉まんを作る製造機械のリース料が3万円かかるとしましょう。
まとめますと、この肉まん屋の固定費は以下のようになります。
肉まん屋の固定費
家賃10万円
人件費45万円
水道光熱費2万円
機械のリース代3万円
固定費の合計=60万円
この肉まん屋は1ヶ月で60万円かかることが分かりました。
ステップ③限界利益と限界利益率を算出する
実は、この固定費と変動費率の数字が分かるだけで損益分岐点売上高を算出することができます。
ただ今回はしっかりと損益分岐点売上の計算を学んでいただきたいのでもう一つ計算の工程を説明します。
それは限界利益を求めることです。
限界利益とは売上から変動費を引いたものを言います。
先ほどの肉まんの場合は100円に対して40円の変動費がかかっているので60円(100円−40円)が限界利益になります。

限界利益は、いわゆる利益の最大を表す数字のことで販売量に合わせて必ず費用としてかかる変動費を差し引いたものになります。
利益の最大の数字なので、どう頑張ってもこれ以上の利益は出ないということです。
利益を出す上で本来なら固定費も差し引くのですが、仮に固定費が0だった場合でも限界利益以上の利益を出すことはできません。
この限界利益は経営する上でとても重要な数字で、限界利益がもしマイナスになるのであればその商品を販売してはいけません。
変動費は必ずかかるわけですから、売上以上の変動費がかかってしまうとどれだけ頑張っても黒字化できません。
そしてこの売上に対する限界利益の割合を限界利益率と言います。
つまりこの肉まんの限界利益率は60%(60円÷100円)になるということです。
限界利益率が高ければ高いほど、その商品は高い収益性があるとも言えます。

商品の種類にもよりますが、統計的には限界利益率が25%を切ると赤字になりやすいとも言われています。
お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、限界利益は売上から変動費を差し引いたものなので、次の式で限界利益率を出すことができます。
限界利益率=1−変動費率
変動費率は売上に対する変動費の割合なので上記の式が成り立つのが分かると思います。イメージを以下に掲載しておきます。

ステップ④固定費を限界利益率で割る
最後のステップは固定費を限界利益率で割るだけです。
損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率
そうすると損益分岐点売上高が算出されます。

それだけで損益分岐点売上高が計算できるの?
実際にそうなるかを確かめてみましょう。
先ほどの例の数字を活用して計算してみます。
固定費の合計額が60万円で限界利益率が60%なので、計算すると100万円(60万円÷60%)になります。
つまりこの肉まん屋の損益分岐点売上高は100万円になり、1個100円の肉まんを1カ月で1万個を販売しないと赤字になるということになります。
試しに肉まんが9,000個、10,000個、11,000個の場合でどうなるか試してみましょう。
肉まんの売上が9,000個の場合
売上:90万円(100円×9,000個)
変動費:36万円(40円×9,000個)
固定費:60万円
利益=90万円-36万円-60万円=-6万円の赤字
肉まんの売上が10,000個の場合
売上:100万円(100円×10,000個)
変動費:40万円(40円×10,000個)
固定費:60万円
利益=100万円-40万円-60万円=0円
肉まんの売上が11,000個の場合
売上:110万円(100円×11,000個)
変動費:44万円(40円×11,000個)
固定費:60万円
利益=110万円-44万円-60万円=6万円の黒字
上記を見てもらうとちゃんと10000個の売上の場合には損益が0円になり、それ以下なら赤字、それ以上なら黒字になっていますね。
この固定費÷限界利益率という式さえ覚えていれば簡単に会社の損益分岐点売上高を算出することができるのです。

固定費÷(1-変動費率)でもいいですからね。
損益分岐点売上高の応用計算と活用法

目標利益に必要な売上高を簡単に算出
ここまでの説明で、損益分岐点売上高の算出方法について理解できたと思います。
ここからは損益分岐点売上高の計算を使った、応用項目を解説していきたいと思います。
損益分岐点売上高はあくまでも損益が0になる所を求めるものなので、赤字にしないようするために見るのが一般的です。
でも実際はいくら利益がほしいという目標を立てて販売計画を立てると思います。
しかし、目標利益を達成するために必要な売上高はいったいいくらなのかが分からないと計画を立てることができません。
そこで、今まで勉強した損益分岐点売上高の計算式が役にたってきます。
目標利益を達成するための売上高は損益分岐点売上高の計算式をちょっとだけ改良することで求めることができるのです。
計算式は以下のとおりです。
目標利益売上高=(固定費+目標利益)÷限界利益率
お分かりいただけましたでしょうか?
損益分岐点売上高の計算で使った固定費に目標利益を加えるだけで目標利益を達成するために必要な売上高が分かるのです。
例えば1カ月で利益を15万円出したいと考えたとしましょう。
先ほどから使っている肉まん屋の数字を使うと固定費が60万円、限界利益率が60%なので固定費60万円に目標利益の15万円を足します。
すると75万円になるので、それを限界利益率の60%で割るだけで求めることができます。
計算すると125万円(75万円÷60%)になります。
実際にそうなるか確かめてみましょう。
売上が125万円なので100円の肉まんが1万2500個販売することになります。
そして変動費が1個あたり40円なので40円×12500個を計算すると50万円になります。
そして固定費は変わらず60万円なので、125万円から変動費50万円と固定費60万円を差し引くと利益は15万円になります。

ほんとだ!さっきの式を覚えておくだけで簡単に分かるということだね。
これなら何とか覚えれられそうだよ。
変動費率をさげて損益分岐点売上高を下げる
続いての応用は、損益分岐点売上高を下げる方法を解説します。
損益分岐点売上高を求める方法が分かったけれど、その売上を達成するのが難しいと判断することがあると思います。
いくら黒字化するための売上が分かった所でそれを実現できなければ意味がありません。
その場合はどうするか?なのですが、簡単な方法があります。
それは損益分岐点売上高を下げることです。
損益分岐点売上高を下げる方法として、変動費率を下げる方法があります。
先ほどの肉まんの例の変動費率は40%でしたが、これを下げる施策を考えます。
下げる施策として以下の2つが考えられます。
❶変動費を下げる
❷販売価格を上げる
❶の変動費を下げる施策ですが、先ほどの肉まんは1個あたり40円の変動費(材料費)でした。
この価格を仮に30円にまで下げたとしましょう。
そうすると変動費率は30%になり、さらに限界利益率は70%になります。
そうなると、100万円の損益分岐点売上高(固定費60万円÷60%)が約85万7千円(固定費60万円÷70%)まで下げることができます。
この場合、今までは黒字化するのに10000個以上の肉まんを販売する必要があったものが、損益分岐点売上高が下がったので8572個以上販売すれば黒字化できることになります。

変動費を下げるということは、例えば材料や仕入先の変更を考えるなどが考えられます。
それにより商品の品質が下がらないようにするための施策も必要になります。
❷の販売価格を上げる方法ですが、変動費はそのままで販売価格を変えてしまう方法です。
材料費である変動比率は40円のままで肉まんの販売価格を100円から110円や120円にする方法です。
そうすることで変動費率が下がり損益分岐点売上高も上がっていきます。
例えば100円の肉まんが10円単位で値上げした場合は以下のように損益分岐点売上高が変わってきます。
このように販売価格を変えることで損益分岐点売上を下げることが可能ですので、適正な販売価格を検討する必要があります。
上記の表を見てもらえば分かるのですが、変動費率を下げると限界利益率が上がるので収益性が向上します。
当たり前ですが変動費を下げつつ、販売価格を上げるとさらに損益分岐点売上高を下げることができます。
固定費を下げて損益分岐点売上高を下げる
損益分岐点売上高を下げる他の方法として固定費を下げる方法もあります。
損益分岐点売上高は固定費を限界利益率で割ることで求められるので、固定費を下げると同じように損益分岐点売上高も下がります。
例えば限界利益率が60%のままで固定費が60万円から45万円になった場合には、損益分岐点売上高が100万円(60万円÷60%)から75万円(45万円÷60%)になります。
固定費を削減するのはなかなか難しいですが、定期的に費用を見直すことで固定費を下げれるかもしれません。
固定費が下がるとそれだけ収益性が高くなります。
安全余裕率と損益分岐点比率
最後に損益分岐点売上高に関するもので覚えていてほしい指標があります。
それは以下の2つです。
❶損益分岐点比率=損益分岐点売上高÷実際の売上高
❷安全余裕率=1-損益分岐点比率
❶の損益分岐点比率は損益分岐点売上高が実際の売上高に対してどれくらいの割合であるかを調べるものになります。
仮に損益分岐点売上高が100万円で実際の売上が125万円の場合の損益分岐点比率は80%(100万円÷125万円)になります。
損益分岐点比率が高いほど、会社は危険であると判断されます。逆に低いほど、優良な会社であると判断されます。
優良である目安ですが、損益分岐点比率が70%以下の 会社や事業は収益性が高く安定した利益を確保できるとされています。
❷の安全余裕率は1の値から損益分岐点比率を差し引くことで求めることができます。
損益分岐点比率が仮に70%の場合の安全余裕率は30%(1-70%)になります。

損益分岐点比率の逆ってことだね♪
安全余裕率は経営の安全性を見るもので、損益分岐点比率とは逆で数字が高いほど安全な会社と言えます。
業種にもよりますが一般的に安全余裕率が10%未満になると危険と言われています。
実際に指標を見る場合は損益分岐点比率でも安全余裕率でもどちらでも大丈夫です。
こうした指標を使うことで経営に役立てることができるので覚えておくといいと思います。

損益分岐点比率は低い方がいい、安全余裕率は高い方がいいと覚えておきましょう。
まとめ:損益分岐点売上高の把握は経営の基礎
それではまとめに入りましょう。
損益分岐点売上高のまとめ
・売上から費用を引いて0になる所を損益分岐点という
・損益が0になる売上高を損益分岐点売上高という
・損益分岐点売上高は固定費を限界利益率(1ー変動比率)で割ることで求めることができる
・目標利益売上高の算出方法は固定費に目標利益を足したものを限界利益率で割ることで求めることができる
・損益分岐点売上高を下げる方法として、変動費や固定費を下げる、販売価格を上げる方法がある
・損益分岐点比率は低い方が良く、安全余裕率は高い方が良い
今回の記事を読んで損益分岐点売上高について理解ができたと思います。
損益分岐点売上高の把握は会社を経営する上で必ず必要なことだと僕は思っています。
把握ができていないと売上だけを見てしまい、間違った判断をしてしまう可能性もあります。
利益は売上と費用によって形成されるものなので、どちらか一方の把握では不十分です。
また、この損益分岐点売上高の算出方法や考え方は個人の生活の収支でも使えるはずです。
いくらになったら赤字になるのか若しくは黒字になるのかを把握できると今後の戦略を立案することができます。
計算方法自体はそれほど難しくないので是非とも活用していただきたいです。
この記事が少しでも参考になれば嬉しいです。
最後までお付き合いしていただきありがとうございました。