
複数の事業をしているんだけど、どの事業に力を入れたらいいの?
こんなお悩みを解決いたします!
本記事を読むとわかること
プロダクトポートフォリオ(PPM)について分かる
事業ライフサイクルや経験曲線効果について分かる
PPMの考え方や具体的な使用方法について分かる
適切な資金の配分方法について分かる
本記事の信頼性

ぎょうざ (@gyouza_maney)
この記事を書いている僕は、経営に関するの資格を多数保有しており、現在は複数の会社を経営しております。
今回は会社経営において、複数の事業をしている時にどの事業に資金を投入するべきかどうか、撤退した方がよい事業はないか等を判断することができるフレームワークのプロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)についてわかりやすく解説していきます。
事業を多角的に発展していく場合や経営資源を効率よく使いたい場合にこのフレームワークが役にたちます。
僕自身、会社を複数経営しており、プロダクトポートフォリオマネジメントの考え方を活用しております。
またこのフレームワークは、個人事業や自分の仕事においても活用できるので一緒に勉強していきましょう。
それではいきましょー
プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)の考え方

PPMは4つエリアで構成されたマトリックス
プロダクトポートフォリオマネジメントとは頭文字をとって略してPPMとも言われ、アメリカのボストンコンサルティンググループが開発した戦略策定支援ツールのことで複数の事業展開をする際に適切な経営資源の配分を行うために考えられた理論になります。
PPMは4つのエリアで構成されたマトリックスで表され、縦軸に市場成長率、横軸に相対的マーケットシェア(相対的市場占有率)をとり、下記のようなマトリックスで表現されます。
各項目については、この後解説していきますが、PPMは事業ライフサイクルと経験曲線効果の考え方が基本となっています。

なんだか難しそうだな。。

できるだけわかりやすく解説していくから頑張ってついてきてね。
【事業ライフサイクル】導入期、成長期、成熟期、衰退期を表したもの
事業ライフサイクルとは、事業をスタートさせて、衰退や撤退するまでのサイクルを表したものです。
このサイクルは4つのステージがあり、導入期、成長期、成熟期、衰退期の4つのステージがあります。

人間で言うと、赤ちゃんから成長して思春期の中学生や高校生になり、そして社会人になり、社会人を引退して老後生活を送るみたいなイメージです。
各ステージには特徴があり、以下のようになります。
導入期
状態:事業の認知度が低い
売上:低い
費用:高い
利益:マイナス
市場:小さい
競合:少ない
成長期
状態:事業の認知度が高まっている
売上:増加傾向
費用:高い
利益:プラスに転向
市場:急拡大
競合:多くなる
成熟期
状態:事業の認知度が浸透し、成長がストップ
売上:高い
費用:低い
利益:最大
市場:横ばい
競合:減少
衰退期
状態:事業の需要がなくなっていく
売上:減少
費用:低い
利益:減少
市場:減少
競合:減少
事業を始めたばかりの導入期は、認知度も低く売上も低い状態です。
しかし、認知度を上げるために広告や設備投資などの費用が増えます。
そこから成長期に突入し、顧客に認知され売上も確保できるようになってきます。
しかし、成長している最中なので費用もどんどん増えていきます。
合わせて、その事業が浸透していく段階なので競合他社のライバルも増え、市場も成長していきます。
成長期を超えると成熟期を迎え、売上は高いですが、費用も低い状態になるので利益は最大化されます。しかし、成長はここでストップしてしまいます。
成熟期は終わると衰退期に突入し、その事業に対して需要がなくなっていきは売上も減り利益も減っていきます。
そして市場も衰退していくのでライバルである競合他社も減っていきます。
これが事業サイクルの一連の流れになります。
イメージした図解を下記に掲載しておきます。
事業ライフサイクルと同じ考え方で製品ライフサイクル(PLC)というものがあり、これは事業ではなく製品やサービスに着目して導入期、成長期、成熟期、衰退期をみていくもので他の記事で詳しく解説していますので、気になる方は是非ご覧下さい。
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商品も人間と同じように成長する!PLCを理解して大事に育てよう!
【経験曲線効果】生産量の積み重ねによりコストが低下
経験曲線効果とは、製品などの累積生産量が増えていけばいくほど、1つあたりの製品コストが減少していく効果のことです。
イメージとして事業を初めたばかりの時は、製品を生産する技術も未熟で設備も不十分なので、1つの製品に対してのコストの割合が高くなってきてしまいます。
しかし、時間の経過に合わせて生産量が増えていき、それにより作業者の技術も高まり、製品を作る時間も短縮されていきます。
また生産していく中で、設備の改善を行い、さらに時間短縮が実現され、1つあたりのコストが低下していきます。
このようなことを経験曲線効果と言います。

初めは肉まんがうまく作れなかったけど、毎日の修行でレベルアップして早く肉まんが作れるようになったみたいな感じだね。
経験曲線効果を図解すると下記のようになります。
縦軸にコスト、横軸に累積生産量をとり、累積生産量が増えれば増えるほどコストが低下しているのが分かると思います。
【PPMの4項目】問題児・花形・金のなる木・負け犬
この事業ライフサイクルと経験曲線効果の考え方をベースにして、PPMのマトリックスにあてはめていきます。
PPMはあくまでも経営資源の配分を考えるもので、経営資源の配分とはキャッシュフロー(お金の流れ)に着目することになります。
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黒字倒産を防げ!キャッシュフロー計算書を理解してお金の流れを掴もう!
事業サイクルで解説した通り、導入期はお金がないですが、成長期、成熟期に移行する上でキャッシュ(資金)の量が増えていきます。
経験曲線効果の観点から見ると、初めては製品に対してコストが多くかかっていましたが、事業が成長し生産量が増えていくにつれてコストが低下していきます。
つまり、コストが減るということは利益が増えキャッシュが増えることになります。
この2つの考え方をベースに事業をグループ分けして、キャッシュの配分を考えていきます。
PPMでは4つのグループに分けていきます。そのグループは以下の通りです。
❶問題児
❷花形
❸金のなる木
❹負け犬
複数の事業を上記の4つのグループのどこかに振り分けていくのですが、各グループには特徴がありそれを順番解説していきます。
1つ目のグループ:問題児

市場成長率は高く、相対的市場占有率が低い事業
1つ目のグループの問題児について解説していきます。
事業ライフサイクルで言うと成長期の初期に該当し、導入期から成長期に移り変わるタイミングの事業がこの問題児のグループに該当します。
市場成長率はこれから事業として成長していく可能性が高いので高くなります。
しかし、相対的マーケットシェアは、まだまだ顧客に対して、事業のサービスの認知が浸透しておらず低い状態なのが特徴です。
そのため、競合に打ち勝つためには多額のキャッシュ(資金)が必要になってきます。
しかし、売上自体がそこまで多くありません。
ですので事業に入ってくるキャッシュが少ないので、最終的に残るキャッシュフローがマイナスになる特徴があります。
下記のPPMマトリックスを見ると右上のエリアに該当するので、そこを見てもらうと市場成長率が高く相対的マーケットシェアが低いというのが分かると思います。
例えば、新しいサービスの事業を開始した場合などは、成長は期待できる可能性はあるけれど資金を投入しても将来どうなるか分からないような事業はこの問題児のグループになります。

不良は、何をするかわからないみたいな感じだね。。
2つ目のグループ:花形

市場成長率も相対的市場占有率も高い事業
2つめのグループは花形です。
花形は事業サイクルでいうと成長期に該当します。問題児は成長期の初期でしたが、花形の場合は成長期の中期から後期あたりになります。
問題児がさらに成長すると下の図のように花形に移行すると考えていただければ大丈夫です。
市場成長率は事業としてまさしく成長している段階なので高くなります。
そして、それに合わせて顧客に対しての認知度も高まっていく状態なので相対的マーケットシャアも高くなります。
知名度も上がり、売上が急速に加速するのでキャッシュが多く確保できる状態なのですが、それと同時にライバル企業も増えていくため広告宣伝費などのコストをかける必要がり、キャッシュが出ていく状態でもあります。
ですので、手元に残るキャッシュは少ない状態になるということです。

スポーツでいうと今、まさに成長して活躍している花形選手なので、こういった特徴のある事業は花形のグループに該当します。
3つ目のグループ:金のなる木

市場成長率は低く、相対的市場占有率が低い事業
3つ目のグループは金のなる木です。
金のなる木は事業サイクルでいうと成熟期に該当にすることになります。
花形からさらに成長し、より事業の完成形へと近づきます。
しかし、成熟している状態なので市場成長率は鈍化し相対的に低くなります。
一方で、事業は成熟しており当然顧客からの認知も十分な状態なので、相対的マーケットシェアは高い状態になります。
成熟期は新規顧客は獲得しずらい状態ですが、売上も十分に獲得できキャッシュの流入が高い状態になります。
また、成熟市場であるため、参入企業も少なくライバルも減少傾向のため、広告宣伝といったコストも成長期の時と比べて少なくてすみ、サービスや製品を生産する上で経験曲線効果の影響を受け、コストも低く、出て行くキャッシュが少なくなります。
つまり手元に残るキャッシュが最大の状態になります。

お金が生まれる状態だから金のなる木って呼ばれているんだね♪
そして、金のなる木の事業は、キャッシュを生み出す事業であるため、このキャッシュを有効に活用しなければいけません。
ここがPPMの最大のポイントで、このキャッシュを成長が見込まれる事業へ投資することが鍵になります。
本体であれば、お金を生み出す金のなる木の事業にさらに投資をすることが重要であるように見えますが、先ほど申し上げたとおり、金のなる木は市場成長率が低いのが特徴です。
つまり成長が見込まれないということになります。
だったら成長が見込まれる事業へ投資する方が、キャッシュの活用としては効率がいいのです。
その事業というのが、これまで紹介した問題児と花形です。
問題児と花形はPPMマトリックスを見ていただくと成長率が高いことが特徴です。
ですので金のなる木の事業の資金を花形や問題児の事業に投資する方が理にかなっているのです。
問題児の事業に資金を投入することで花形の事業へと進化することができるし、花形の事業に投資することで2つ目の金のなる木の事業へと育てることができるかもしれません。
結果、さらにキャッシュを生み出せる可能性があります。
4つ目のグループ:金のなる木

市場成長率も相対的市場占有率も低い事業
4つ目のグループは負け犬です。
負け犬の事業の事業サイクルは衰退期に該当します。
負け犬は金のなる木から移行してきたもので、成熟した事業は時間の経過とともに事業への需要がなくなり、市場も衰退していきます。
つまり市場成長率も相対的マーケットシェアも低くなります。
事業も縮小しているため、売上も減少しキャッシュは少なくなっていきます。
但し、コストは経験曲線効果により低いままで、成長も見込まれないので広告宣伝といったコストもかからず出ていくキャッシュは少ないなります。
ですので、手元に残るキャッシュは少なくなります。
この負け犬の事業に該当した場合には事業の撤退を考えるか、撤退して得た資金を他の問題児や花形へ投資することも検討する状態になります。

この状態はかわいそうなのね。負け犬って名前もなんだか嫌なのね。
プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)の使い方

複数の事業を振り分けて資金配分を考え、事業の成長を図る
ここまでで、PPMについてある程度ご理解いただけたと思います。
ここからは実際に例題を出してPPMのマトリックスを使い、あてはめていきましょう。
仮に以下の5つの事業をしているとしましょう。
レストランの事業
10年前に会社を立ち上げ、始めた事業で売上が年々減少している。
通信販売の事業
会社創業の翌年から始めた事業で売上の大半を占めている。
冷凍餃子の事業
2年前から初めており、認知も上がり、ある程度の売上を確保できるようになっている。
冷凍肉まんの事業
冷凍餃子の売上が成長し始めた時点でスタートした事業で売上も少ない。
高齢者専用スポーツジムの事業
今年から事業を開始し、認知度もなく売上もほとんどない。
上記の各事業をPPMのマトリックスにあてはめていきます。
レストランの事業は衰退期にさしかかっており、売上も年々減少しているPPMの負け犬に該当し撤退の検討をしていきます。
しかし、売上は低下しているがコストも小さく利益が出ている場合は、利益が出ているまでは継続することも選択肢の1つです。
通信販売の事業は、売上も多く長年積み上げきた経験があるので、この会社でのキャッシュの柱の事業になり金のなる木に該当します。
ここで確保したキャッシュを花形の事業や問題児の事業に投資していくことを検討します。
上記の例では、冷凍餃子の事業が売上と認知度の増加傾向にあるので花形に該当します。
しかし、ライバルも多いため、広告、設備投資、新商品の開発等に資金をかけることを考えます。
その資金は金のなる木の事業である通信販売の事業から確保するようにします。
そして花形事業から金のなる木の事業へ成長するように戦略をたてていきます。
続いて、冷凍肉まんの事業ですが冷凍餃子の事業が成長していく過程で始めたものなので、事業を始めたばかりで今後どうなっていくかもわかりません。
つまり、問題児に該当します。
しかし、冷凍餃子の事業が成長していっているので、冷凍肉まん餃子も花型へと成長できる可能性があります。
そこで通信販売事業のキャッシュを使い、冷凍肉まんの事業へ投資していくことを考えます。
最後に高齢者専用スポーツジムの事業ですが今年に始めたばかりで、今後どうなるかが分からない状態です。
この事業も問題児に該当します。
しかし、これから成長が見込まれるのであれば、通信事業のキャッシュを活用し花形へと成長させるために投資することを検討できます。
このように事業を4つのグループに振り分けて、戦略を考えていきます。
問題児の事業は花形の事業へ移行できるように考え、花形の事業は金のなる木の事業へ移行できるように考えていきます。
仮に冷凍餃子の事業が金のなる木の事業へと成長した場合は、今度は冷凍餃子のキャッシュを他の事業へと振り分けていきます。
このようにPPMのマトリックスを使うことができます。

あくまでも事例ですので、今回解説したものは、実際の景気や事業の傾向には関係ないのでご了承下さい。
また各事業の分析にSWOT分析やVRIO分析などのフレームワークを活用し、事業ごとの強みや弱みを発見することもできます。
こうしたものを活用し、PPMのマトリックスに落とし込むことで戦略の精度をあげることもできます。
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SWOT分析を理解して自分の事業や会社を守り成長させよう!
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市場で生き残れ!VRIO分析で自社の強みと弱みを把握しよう!
個人の副業にも応用できる
最後にこのPPMの考え方は、個人の副業の時などにも活用できるので考え方を簡単に解説します。
例えば、収入の柱は会社員の給料であり、他にブログやせどりなどの物販をしているとします。
その場合は会社の給料はこれから給料がぐんぐん上がることは期待できないけれど、収入のメインとしてキャッシュを生み出しています。
そうなると会社の給料は金のなる木に該当します。
そして、副業のブログやせどりは、始めたばかりの場合はどうなるか分からない状態なので問題児に該当することになります。
仮に先にせどりの副業を始めており、ある程度の収入を確保できていた場合には、その副業は花形として捉えることもできます。
PPMの考え方を活用すると、会社の給料をブログやせどりの副業へ投資し、将来のキャッシュを増やすことを考えることができます。
PPMはキャッシュに着目する考え方ですが、例えばキャッシュを成果や時間に置き換えて考えることもできます。
そうすると日常生活のさまざな場面で活用することもできるので、このフレームワークを覚えておくと便利です。
まとめ:PPMを活用し事業を多角的に広げていく
それではまとめに入りましょう。
PPMのまとめ
・PPMは事業ライフサイクルと経験曲線効果の考えをベースにしている
・PPMは4つのグループがあり、問題児、花形、金のなる木、負け犬。
【問題児】
相対的市場占有率:低い
市場成長率:高い
事業ライフサイクル:成長期初期
資金流入:少ない
資金流出:多い
キャッシュフロー:マイナス
【花形】
相対的市場占有率:高い
市場成長率:高い
事業ライフサイクル:成長期
資金流入:多い
資金流出:多い
キャッシュフロー:少ない
【金のなる木】
相対的市場占有率:高い
市場成長率:低い
事業ライフサイクル:成熟期
資金流入:多い
資金流出:少ない
キャッシュフロー:多い
【負け犬】
相対的市場占有率:低い
市場成長率:低い
事業ライフサイクル:衰退期
資金流入:少ない
資金流出:少ない
キャッシュフロー:少ない
・PPMの考え方の基本は金のなる木の資金を花型や問題児の事業へ配分する。
いかかがでしたでしょうか?
PPMのフレームワークは、事業を拡大する上で必要な知識だと思います。
いかに、資金の配分をうまくできるかが大切であり、これにより今後の展開が変わってくると思います。
時代の変化が激しいからこそ、各事業の状況を把握し戦略を立案していかなければなりません。
是非とも、事業展開の際や個人での生活においても活用できるフレームワークですので使ってみて下さい。
少しでもこの記事が参考になれば嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。