こんにちわ!ぎょうざです。
今まで、GDPについてこのサイトでいくつかの記事を書いてきましたがもう少し深くGDPを見ていきましょう。
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GDPを違う視点で見てみよう!三面等価の原則についてわかりやすく解説
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GDPとGNPの違いって何?NDP・NNI・NNPについてもわかりやすく解説!
今回は、名目GDPと実質GDPの違いについて解説していきます。
よくニュースでも度々登場する言葉だと思います。
違いを理解して、GDP関連についてしっかりマスターしましょう。
そして、今回はこの2つを使って、経済データーも読めるように解説していきます。
それではいきましょー
本記事を読むとわかること
名目GDPと実質GDPの違いについて分かる
GDPデフレーターの使い方がわかる
日本のGDPの過去の推移と現状について分かる
本記事の信頼性

ぎょうざ (@gyouza_maney)
この記事を書いている僕は、お金の専門家であるファイナンシャルプランナーの資格を保有しており、現在は複数の会社を経営しております。
名目GDPと実質GDP

名目GDPとは
まず、簡単にさらっとGDPについておさらいしていきましょ。
GDPとは国内総生産と呼ばれ、一定期間に国内に生み出された付加価値(もうけ)の合計です。
そしてGDPは付加価値の合計を足していくものなので、最終の売上と一致します。
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今さら聞けない!GDPについて正しく理解しよう
何回かこのサイトに登場していますが、イメージ図は下記のような感じです。

上記の図のようパン1個の売上が200円の場合はパン1個分のGDPは200円になります。
そしてこのパンが1万個売れた場合のGDPは200万円になります。
この200万円が名目GDPになります。
名目GDPを違う言い方をすると、生産された数量に市場で販売されている価格の価値の合計をいいます。

今日は特に難しくないのね。
単純に販売価格と生産された数を掛け算したらいいだけってことでしょ?

そうだね。名目GDPだけだとそんなに難しくないね。
それじゃ、次は実質GDPを見てみようか。
実質GDPとは
では、実質GDPを見ていきましょう。
実質GDPとは物価の変動率を除いた、一定期間に生産されたモノの本当の価値のことを言います。

急に何をいいだしているの?
言い回しが優しくないのね。物価の変動率って何なのさ。
実際に例に出して説明すると実質GDPについて分かると思うので見ていきましょう。
現在、肉まん屋の肉まんが100円で販売されているとします。
それが1万個生産されてすべて売れた場合は売上は100万円になります。
ところが肉まんに人気が出てしまい、店主はこう考えます。

ありがたいことにいつも売り切れになるんじゃが、閉店間際に来るお客さんはいつも売り切れでわしの肉まんを食べれていないの~。
こんなに人気があるんだし、少し値上げをするかの~。
そうすれば、売れる個数は減るが売上も下がらんじゃろう。
こう考えた店主は2年目から肉まんを100円から150円に値上げを決行しました。
しかし、それでもこの肉まんは人気で生産した1万個分の肉まんがすべて売れてしまいました。
すると売上は150万になり、名目GDPで表すと150万円になります。
しかし、この場合は値上げをしたものの、売れた個数はそのままなので生産量(肉まんを作った数)はそのままです。
先ほどの実質GDPの説明で物価の変動率を除くと書いてあったと思うのですが、この物価の変動率を除くとは、この例でいく肉まんの値上げの部分を指します。
つまり、実質GDPとは値上げを部分除いて、付加価値がどうなったかを見ます。
値上げした部分を除くには、単純に元の価格に戻せばいいので、この場合だと販売価格の150円を値上げ率の50%分を割り引いて算出できるので、150円÷(1+値上率50%)を計算し、当然、元の価格の100円になります。
実質GDPはこれに生産量(売れたもの)をかけるので、100円が1万個売れたことになるので実質GDPは100万円になるということです。
ここまでの名目GDPと実質GDPを表すと以下のようになります。
肉まんの名目GDPと実質GDP
1年目
名目GDP=販売価格100円×1万個=100万円
実質GDP=販売価格100円÷(1+物価変動率0%)=100万円
2年目
名目GDP=販売価格150円×1万個=150万円
実質GDP=販売価格150円÷(1+物価変動率50%)×1万個=100万円
基本的にGDPが増えると経済が成長していると判断されるのですが、上記のように名目か実質かで見ると判断内容が変わってしまいます。
名目GDPで見ると、100万円から150万円になるのでGDPが伸びており、経済が成長しているように見えますが、実質GDPで見ると100万円が100万円になり、同じ数字なので経済は成長していないと判断されるのです。

実質で見た場合は、値上げの部分は考慮していないので同じ数の肉まんしか売れていないことになり、経済は成長していないと見られるということです。
値下げの場合はどうなる?

では、今度は逆の場合はどうなるのでしょうか?
いわゆる値下げの場合です。
これも例を出してみてきましょう。
同じように販売価格100円の肉まんが1年目は1万個売れたとします。
2年目は100円の肉まんを90円に値下げし、今度は色んなパターンを想定して、1万個売れた場合、1万1千個売れた場合、9千個売れた場合の3パターンで名目GDPと実質GDPがどうなるかを考えてみましょう。
名目GDPと実質GDPの変化
1年目
名目GDP=販売価格100円×1万個=100万円
実質GDP=販売価格100円÷(1+物価変動率0%)=100万円
2年目(生産量はそのまま)
名目GDP=販売価格90円×1万個=90万円
実質GDP=販売価格90円÷(1+物価変動率-10%)×1万個=100万円
2年目(生産量は増加)
名目GDP=販売価格90円×1万1千個=99万円
実質GDP=販売価格90円÷(1+物価変動率-10%)×1万1千個=110万円
2年目(生産量は減少)
名目GDP=販売価格90円×9千個=81万円
実質GDP=販売価格90円÷(1+物価変動率-10%)×9千個=90万円
生産量がそのままの場合の名目GDPは100万円から90万円なので経済が縮小したことになります。
実質GDPは100万円から100万円なので経済はそのままという判断になります。

実質GDPがそのままなのは、物価変動率(値下げ分)を考慮しないからですね。
生産量が増加した場合の名目GDPは100万円から99万円なので経済が縮小したことになります。
実質GDPは100万円から110万円なので経済は拡大したという判断になります。

名目GDPが縮小したのは、生産数が増えた以上に値下げの影響が大きかったからですね。
実質GDPが拡大したのは、生産数は考慮して物価変動率(値下げ分)を考慮しないからですね。
生産量が減少した場合の名目GDPは100万円から81万円なので経済が縮小したことになります。
実質GDPも100万円から90万円なので経済が縮小したという判断になります。

名目GDPが縮小したのは、生産数が減り値下げもあったので当然の結果ですね。
実質GDPも縮小したのは、物価変動率(値下げ分)を考慮しなくても生産数が減ったからですね。
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景気の判断ってどうするの?景気動向指数について徹底解説!
GDPデフレータとは

物価がどれだけ変化したかが分かる
ここまで名目GDPと実質GDPの違いは理解できたと思います。
この2つの指標を使ってある事実を見ることができます。
それは「物価の変化がどうなっているか」です。
名目GDPと実質GDPの大きな違いは物価の差になります。
この物価の差に着目して見る有名な指標があり、「GDPデフレーター」と言います。
この指標の計算式は以下の通りになります。
名目GDPを実質GDPで割ることで物価の変動がどうようになったのかが分かるのです。
例えば、名目GDPが110で実質GDPが100の場合は、GDPデフレーターは110%になります。
一方名目GDPが90で実質GDPが100の場合にはGDPデフレーターは90%になります。
GDPデフレーターは100%を基準にして考えます。
つまり、求めた値が100%を超えた場合は超えた分だけ物価があがりインフレの状態になっていると判断でき、逆に100%未満の場合は100%に満たない分だけ物価が下がりデフレの状態になっていると考えることができます。

ところでデフレーターってどういう意味?

言葉の意味は「気球のような膨らんだものから空気を抜くこと」、つまり「しぼませる」いうことで、名目GDPから物価の上昇分をしぼませて実質GDPにするというところからそう呼ばれているみたいだよ。
仮に実質GDPを求めようと思った場合は、上記の式を分解したらいいだけなので、実質GDP=名目GDP÷GDPデフレーターで求められるよ。
日本の名目GDPと実質GDP

では実際に日本の名目GDPと実質GDPの過去の推移を見て、合わせてGDPデフレーターもみていきましょう。

名目GDPでみた経済成長率(名目成長率)と実質GDPでみた経済成長率(実質成長率)も表に入れています。
1994年から2020年までの日本のGDPの推移は以下の通りです。
年 | 名目GDP | 実質GDP | GDPデフレータ | 名目成長率 | 実質成長率 |
1994年 | 510.9兆円 | 446.5兆円 | 114.4% | - | - |
1995年 | 521.6兆円 | 458.3兆円 | 113.8% | 2.1% | 2.6% |
1996年 | 535.6兆円 | 472.6兆円 | 113.3% | 2.7% | 3.1% |
1997年 | 543.5兆円 | 477.3兆円 | 113.9% | 1.5% | 1.0% |
1998年 | 536.5兆円 | 471.2兆円 | 113.9% | -1.3% | -1.3% |
1999年 | 528.1兆円 | 469.6兆円 | 112.4% | -1.6% | -0.3% |
2000年 | 535.4兆円 | 482.6兆円 | 110.9% | 1.4% | 2.8% |
2001年 | 531.7兆円 | 484.5兆円 | 109.7% | -0.7% | 0.4% |
2002年 | 524.5兆円 | 484.7兆円 | 108.2% | -1.3% | 0.0% |
2003年 | 524.0兆円 | 492.1兆円 | 106.5% | -0.1% | 1.5% |
2004年 | 529.4兆円 | 502.9兆円 | 105.3% | 1.0% | 2.2% |
2005年 | 532.5兆円 | 512.0兆円 | 104.0% | 0.6% | 1.8% |
2006年 | 535.2兆円 | 519.0兆円 | 103.1% | 0.5% | 1.4% |
2007年 | 539.3兆円 | 526.7兆円 | 102.4% | 0.8% | 1.5% |
2008年 | 527.8兆円 | 520.2兆円 | 101.5% | -2.1% | -1.2% |
2009年 | 494.9兆円 | 490.6兆円 | 100.9% | -6.2% | -5.7% |
2010年 | 505.5兆円 | 510.7兆円 | 99.0% | 2.1% | 4.1% |
2011年 | 497.4兆円 | 510.8兆円 | 97.4% | -1.6% | 0.0% |
2012年 | 500.5兆円 | 517.9兆円 | 96.6% | 0.6% | 1.4% |
2013年 | 508.7兆円 | 528.2兆円 | 96.3% | 1.6% | 2.0% |
2014年 | 518.8兆円 | 529.8兆円 | 97.9% | 2.0% | 0.3% |
2015年 | 538.0兆円 | 538.1兆円 | 100.0% | 3.7% | 1.6% |
2016年 | 544.4兆円 | 542.1兆円 | 100.4% | 1.2% | 0.8% |
2017年 | 553.1兆円 | 551.2兆円 | 100.3% | 1.6% | 1.7% |
2018年 | 556.2兆円 | 554.3兆円 | 100.3% | 0.6% | 0.6% |
2019年 | 559.8兆円 | 554.4兆円 | 101.0% | 0.7% | 0.0% |
2020年 | 538.6兆円 | 528.5兆円 | 101.9% | -3.8% | -4.7% |
通常であれば、健全な経済の成長とはGDPが上がっていき、ゆるやかなインフレの状態であることが望ましいのですが、表とグラフを見てもらうと分かるのですが、ほとんど経済は成長していません。
そしてGDPデフレーターに着目してほしいのですが、2013年あたりまでずっと下落傾向になっています。
つまりデフレの状態になっているということです。
デフレが与える影響については下記の記事で解説しているので、ここでは割愛しますがデフレの状態は経済に悪影響を与えます。
つまり景気が悪いということです。
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お金の価値って一体何?インフレとデフレについて正しく理解しよう!
そして、2013年頃からGDPデフレーターが反転しているのは政府が日本銀行とともに、異次元の金融緩和政策を行ったことが原因と言われています。

異次元って何をしたの!?

この時期に当座預金のマイナス金利政策を行いました。
つまり銀行が当座預金に預けても、利息をもらえるどころが利息を払わなくてはいけない状態になったので、銀行は市場にお金を出す(企業や個人にお金を貸す)ように迫られました。
GDPデフレーターは底打ちしたものの、経済がよくなっているとは到底思えません。
GDPを増やすには消費を増やし、お金が市場で循環する状態が必要になります。
しかし、日本は消費税の増税を行い、消費を抑える政策をしています。
すべては政策のせいだとは言えませんが、このままの日本だと経済成長するのは難しいではないかと私は思っています。
まとめ:GDPを見ることで経済成長しているかどうか判断できる
それではまとめに入りましょう。
GDP関連指標のまとめ
・名目GDPとは生産された数量に市場で販売されている価格の合計のこと
・実質GDPとは物価変動率を除いたGDPのこと
・GDPデフレーターとは名目GDPを実質GDPで求めることができ物価の変化がどうなっているかが分かる
・GDPデフレーターが100%を超えた場合はインフレ、100%未満はデフレの状態になっていると判断できる
・日本は2013年あたりまでデフレの状態が続いており、今も経済が良い状態とは言えない。
今回の記事で各GDPの指標についての理解が深まったと思います。
そして、日本の経済成長が止まっていることに対しての危機感も覚えたのではないでしょうか?
GDPは、私達の今後の生活についても影響を与えるので、日頃から意識しておく必要があると私は思っています。
また日本だけでなく、他の各国のGDPを見てみると、経済成長している国やそうでない国も分かるようになります。
今回覚えた内容をあてはめてみて、興味がある方は各国のGDPの推移を見てみるとおもしろいかもしれません。
この記事が少しでも参考になれば嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。