
社会人になったけど、お給料から引かれる所得税ってどうやって計算されているの?
こんなお悩みを解決いたします!
本記事を読むとわかること
給与収入と給与所得の違いが分かる
各所得控除について分かる
税額控除について分かる
所得税の計算手順と計算方法が分かる
本記事の信頼性

ぎょうざ (@gyouza_maney)
この記事を書いている僕は、お金の専門家であるファイナンシャルプランナーの資格を保有しており、現在は複数の会社を経営しております。
社会人になって、会社からお給料をもらって嬉しい反面、給与明細を見ると何やら色々と給料から差し引かれていませんか?
その中で気になるのがやっぱり税金です。
給与から引かれている税金は所得税と住民税になると思いますが、今回の記事では給料から引かれる所得税について徹底解説していきます。
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住民税ってどうやって計算されているの?所得税との計算の違いについても解説!
年末になると年末調整というイベントもあるので、今回の内容をしっかり学んで、お金に関する知識を向上させていきましょう!
それではいきましょー
給与所得者の所得税計算の流れ

給料収入から多くの項目が差し引かれる
社会人の皆さんは会社からお給料をもらっていると思いますが、このお給料に名前があって正式名称は給料収入といいます。
そして一定程度の給料収入をもらっている人は所得税がかかってきます。
所得税は1月1日から12月31日までに所得として受け取ったものに対してかかる税金のことです。
給与収入の大きさに応じて、所得税が大きくなったり小さくなったりするイメージがあると思いますが、これは半分正解で半分不正解です。
実は所得税を計算するには、給料収入から多くの項目を差し引いて最終的に残ったものに対して税率をかけて所得税を計算します。
ですので、人によっては差し引かれるものが多い人もいるので、給料収入の大きさが同じでも所得税が少ない人も出てきます。
差し引かれる項目についてはこの後、1つずつ解説していきます。
給料収入をもらっている人の所得税の計算のステップは以下のようになります。
step
1給与所得の計算
step
2人的控除の計算
step
3保険料控除の計算
step
4その他所得控除の計算
step
5課税所得の計算
step
6算出税額の計算
step
7税額控除の計算
step
8納付税額の計算
step
9復興特別所得税額の計算
それでは各ステップを順番に見ていきましょう。
ステップ① 給与所得の計算
給与収入から給与所得控除を差し引く
ステップ➀は給与所得の計算です。

さっき言ってた給与収入と給与所得ってどう違うの?
給料収入とは先ほど申し上げた通りで、会社からもらうお給料のことです。
一方で給与所得とは、給与収入から一定の必要経費を引いたものになります。
例えば、八百屋をしていて仮に野菜を100万円分仕入れ、それを販売し、売上が200万円あった場合に、この200万円に対して所得税がかかってしまうとおかしいですよね?
本来であれば、売上の200万円から野菜の仕入れ代の100万円を差し引いた利益に対して税金をとるのが基本です。
このように、会社から給料をもらっている人もその額に応じて一定の経費を国が認めているのです。
給料の一定の経費のことを給与所得控除と言います。
給与所得控除は会社からいただく給料の金額である給料収入の大きさによって以下のように定められています。
例えば、会社から受け取った1年間のお給料が200万円だとします。
これを上記の表に当てはめると給与所得控除は68万円(200万円×30%+8万円)になります。
そして給与収入から給与所得控除を差し引いたものを給与所得と言います。
200万円の給与収入の場合、給与所得控除は68万円でしたので、この場合の給与所得は132万円になります。
この給与所得を計算することが第1ステップになります。
ステップ② 人的控除の計算

人的控除とは人に対する必要経費
ステップ②は人的控除の計算です。
人的控除とは人に対する一定の必要経費のことを言います。

人に対する経費ってどうゆうこと?
人に対する一定の経費とは、お給料をもらっている人の中には、1人で生活している人、専業主婦の奥さんと2人で生活している人、子供を養っている人、父親と母親の面倒を見ている人などさまざまなケースの人達がいます。
ですので、生活費も人によってバラバラになります。多くの人を養っている人は当然支出を多くなります。
その状態で多くの状態の税金を払うとなると負担が重くなります。
そこで養っている人達などの状況に合わせて一定の経費を認めている制度が人的控除になります。
人的控除は以下のとおりです。
人的控除
❶基礎控除
❷配偶者控除
❸配偶者特別控除
❹扶養控除(一般扶養・特定扶養・老人扶養・同居老親族扶養)
❺ひとり親控除
❻寡婦控除
❼勤労学生控除
❽障害者控除(障害者・特別障害者・同居特別障害者)
【基礎控除】誰でも使える人的控除
1つめは基礎控除です。
基礎控除は、基本的には誰でも使える人的控除になります。
控除金額は48万円になります。

よく103万円以下の場合だは税金がかからないと言われるケースがありますが、この理由は給与所得控除の最低控除額は55万円であり、この基礎控除が48万円なので、55万と48万円を足すと103万円になり、給料収入が103万円以下なら所得税はかからないということになります。
但し、合計所得金額が2,500万円を超えてしまうと、この基礎控除額は0円になり使えなくなります。
また合計所得金額が2,400万円を超え2,450万円以下の場合は基礎控除額は32万円、2,450万円を超え2,500万円以下の場合は16万円の基礎控除額になります。
合計所得金額とは給与所得以外の所得も合算したもので、不動産や年金などの所得も含まれます。
他の所得も知りたい方は他の記事で解説しているのでそちらをご覧ください。
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【配偶者控除】収入が少ない配偶者が対象
2つ目は配偶者控除です。
配偶者控除は、一定の条件も満たす配偶者がいた場合に、70歳未満の配偶者の場合は38万円、70歳以上の配偶者の場合は48万円の配偶者控除を受けることができます。
一定の要件とは、控除を受けようとすしている本人の合計所得金額が1000万円以下であることと、配偶者自身の合計所得金額が48万円以下である必要があります。
また、控除を受けようとしている本人の合計所得金額が900万円を超え、950万円以下なら26万円(70歳以上なら32万円)の配偶者控除になり、950万を超え、1,000万円以下なら13万円(70歳以上なら16万円)の配偶者控除になります。

例えば、配偶者である奥さんがパートをしており、パートの収入が100万円の場合はそこから給与所得控除55万円を差し引き給与所得は45万円になるので、配偶者本人の所得の48万円以下を満たすことになり配偶者控除を受けることができます。
また年齢の判定はその年の12月31日で判定します。
【配偶者特別控除】配偶者控除を受けれない一定の配偶者
3つ目は配偶者特別控除です。
配偶者特別控除は、先ほどの配偶者控除の要件から外れてしまった場合に、一定の条件をクリアした場合に受けることができる控除項目です。
一定の条件とは、控除を受けようとしている本人の合計所得が1000万円以下であることは同じなのですが、配偶者の合計所得が133万円以下までなら受けることができる控除です。
控除の額は、配偶者の所得に応じて以下のように変わっていきます。
【扶養控除】年齢に応じて控除額が変わる
4つ目は扶養控除です。
扶養控除は一定の条件を満たす配偶者以外の扶養親族がいた場合に受けることができる控除項目です。
また扶養控除はさらに以下の4つに分かれます。
1.一般扶養
2.特定扶養
3.老人扶養
4.同居老親等扶養
控除の対象になる扶養親族は基本的には、合計所得が48万円以下であることとその年の12月31日で16歳以上であることが必要です。
そして年齢に応じて控除額が変わっていきます。
16歳から18歳までは一般扶養になり、38万円の控除、19歳から22歳までは特定扶養になり、63万円の控除、23歳から69歳までは一般扶養になり38万円の控除、70歳以上で同居していない場合は老人扶養になり、48万円の控除、同居している場合は同居老親等扶養となり、58万円の控除額になります。
扶養控除の扶養親族の範囲は6親等内の血族及び3親等内の姻族になります。
扶養の範囲など詳しいことは他の記事でも解説しているのでそちらをご覧ください。
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【ひとり親控除】子がいて一定のひとり親に対する控除
5つ目はひとり親控除です。
ひとり親控除は、生計を一にする総所得金額等が48万円以下の子がおり、合計所得金額が500万円以下のひとり親の場合に受けられる控除です。
控除金額は35万円になります。

総所得金額等とは合計所得金額から、風水害などの純損失または雑損失等の繰越控除を引いたものになります。
【寡婦控除】ひとり親控除に該当しない寡婦(寡夫)
6つ目は寡婦控除です。
寡婦控除は、ひとり親控除に該当しない寡婦(寡夫)に適用される控除です。
ひとり親控除と大きく違うことは、扶養の対象が子だけでないことです。
つまり、父母や祖父母、孫などを扶養している場合でも適用されるということです。
例えば、結婚はしているが子供がいない場合に、配偶者と死別をし、自分の親を扶養に入れている場合には、この寡婦控除に該当することになります。
寡婦(寡夫)の所得要件はひとり親と同じ、合計所得が500万円以下になります。
寡婦控除の金額は27万円になります。
【勤労学生控除】納税者が学生の場合の控除
7つ目は勤労学生控除です。
勤労学生控除の適用を受けるには、納税者が高校や大学などの学生であり、給与所得などの所得があることが条件になっています。
合計所得金額が75万円以下である必要があり、仮にその所得の中で勤労以外の所得がある場合は10万円以下でないといけません。

どうゆうこと?

例えば、大学生でアルバイトで90万円の給与収入とブログやアフィリエイトなどの所得が15万円の場合、合計所得は50万円(給与所得35万円+雑所得15万円)になるんだけど、この場合は合計所得が75万円以下の条件はクリアしているんだけど、そのうち15万円が勤労以外の所得で10万円以下ではないから、勤労学生控除を受けられないということになるんだ。
勤労学生控除の金額は27万円になります。
【障害者控除】一定の障害を持つ場合の控除
8つ目は障害者控除です。
障害者控除は、納税者本人、その配偶者、扶養親族が障害者である場合に受けることができる控除になります。
障害者の区分は以下の3つになり、控除額も変わります。
1.障害者:控除額27万円
2.特別障害者:控除額40万円
3.同居特別障害者:控除額75万円

障害の程度等により、特別障害者になるかどうかが変わります。
また、扶養控除を受けることができない16歳未満の扶養親族であっても、その親族が障害者である場合は障害者控除を受けることができます。
人的控除の計算例
ここまでが人的控除の説明になります。
最後に例題を出して人的控除がどうなるか見ていきましょう。
【家族構成】
・本人(旦那で給与収入1000万)
・妻(パート収入で100万円の給与収入があり同居)
・長男(20歳で大学生で無収入で同居)
・長女(18歳で特別障害者で無収入で同居)
・次男(15歳で無収入で同居)
・父(70歳で無収入で同居しており扶養)
・母(68歳で無収入で同居しており扶養)
上記の場合の人的控除がどうなるか見ていきましょう。
まず本人の収入が1000万円で合計所得が2500万円を超えていないので基礎控除48万円の適用があります。
妻はパート収入が100万円で給与所得控除の55万円を引くと給与所得が45万円になり合計所得金額が48万円以下になっているので配偶者控除38万円の適用があります。
長男は20歳で無収入なので19歳から22歳までの特定扶養に該当し、扶養控除63万円の適用があります。
長女は18歳で特別障害者なので、16歳から18歳までの一般扶養に該当し、さらに同居特別障害者なので、扶養控除38万円の適用と障害者控除75万円の適用があります。
次男は15歳で扶養していますが、16歳以上じゃないので扶養控除の適用はありません。
父は70歳以上で無収入で同居しているので同居老親等扶養に該当し、扶養控除58万円の適用があります。
母は69歳以上なので、70歳以上ではないので一般扶養に該当し、扶養控除38万円の適用があります。
この場合の人的控除の合計額は358万円(基礎控除48万+配偶者控除+38万+扶養控除63万【長男】+扶養控除38万【長女】+障害者控除75万【長女】+扶養控除58万【父】+扶養控除38万【母】)になります。
ステップ③保険料控除の計算

公的保険や民間保険に関する保険料の控除
ステップ③は保険料控除の計算です。
保険料控除は、公的な社会保険や民間の保険に対する保険料の支払いをしている場合に受けることができる控除になります。
保険料控除は以下の4つになります。
保険料控除
❶社会保険料控除
❷小規模企業共済等掛金控除
❸生命保険料控除(一般・介護・個人年金)
❹地震保険料控除
【社会保険料控除】公的な保険の保険料に対する控除
保険料控除の中の1つ目は社会保険料控除です。
社会保険料控除は、お給料から引かれている健康保険、介護保険、厚生年金保険、雇用保険の保険料が全額控除の対象になります。
また、会社の社会保険だけでなく、自営業者やフリーターなどが払う国民健康保険や国民年金保険の保険料も支払った分だけ全額控除の対象になります。
年の途中に会社に加入した場合は、会社に入社する前に払った国民健康保険や国民年金保険の保険料もこの社会保険料控除の対象になります。
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自分の奥さんや子供の分の保険料を払っている場合も社会保険料控除の対象になります。
【小規模企業共済等掛金控除】IDeCoなどの保険料に対する控除
2つ目は小規模企業共済掛金控除です。
小規模企業共済掛金控除は、個人事業主が加入することができる小規模企業共済の保険料や企業や個人が加入する確定拠出年金の保険料が全額控除の対象になります。
最近では国が促進しているIDeCo(個人型確定拠出年金)の保険料もこの小規模企業共済等掛金控除の対象になります。
仮に会社員の方で会社に企業年金や企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入していない場合で、個人でIDeCoに加入している人は月に23,000円まで保険料を支払うことが可能なので年間にすると276,000円になるので、この保険料の全額が控除の対象になります。

障害のある人を扶養している保護者が加入できる心身障害者扶養共済制度の掛金もこの小規模共済等掛金控除の対象になります。
【生命保険料控除】新旧の取り扱いと3つの種類がある
3つ目は生命保険料控除です。
生命保険料控除は民間の生命保険などに加入し、その支払った保険料に対して控除の適用を受けることができる控除です。
生命保険料控除は旧制度、新制度の2つがあります。
旧制度か新制度の判定は、平成24年1月1日以降に契約を新たに結んだ場合や保障の見直し等を行った場合で制度が変わってきます。
平成23年12月31日以前の制度は旧制度になり、平成24年1月1以降は新制度になります。
さらに旧制度は2種類の生命保険料控除があり、新制度は3種類の生命保険料控除があります。
生命保険料控除の種類は以下の通りです。
生命保険料控除の種類
❶一般生命保険料控除(死亡保険、学資保険などの保険料)
❷個人年金保険料控除(個人年金保険などの保険料)
❸介護医療保険料控除(がん保険や医療保険などの保険料)
旧制度は❶の一般生命保険料控除と❷の個人年金保険料控除が対象で新制度はこの2つに❸の介護医療保険料控除が加わります。
そして旧制度と新制度では保険料控除の金額が変わってきます。
旧制度は以下の通りです。
旧制度は一般生命保険料控除と個人年金保険料控除で各5万円の控除が上限になり、合わせて最大で10万円の控除になります。
例えば、死亡保険で年間6万円の保険料の支払いをして個人年金保険の保険料で年間20万円の支払いの場合は、上記の表にあてはめてると、旧一般生命保険料控除が4万円(6万円÷4+1万5千円)で旧個人年金保険料控除が5万円になり、合計9万円になります。

どれだけ保険料を払ったとしても、合わせて10万円を超えないってことだね。
一方で新制度は以下の通りです。
旧制度と違うのは、上限額が5万円でなく4万円になっていることです。
しかし、介護医療保険料控除が新設されているので、3つの保険に加入している場合は最大で合わせて12万円の控除を受けることができます。

旧制度と新制度の保険に加入している場合はどうなるの?
そうなると合計で14万円の控除が使えるってこと?

いい質問だね。
その場合は旧制度と新制度を使えることになるんだけど、仮に旧制度の一般と年金の保険料控除が5万ずつ、新制度の介護の保険料控除で4万円が使えたとしても、あくまでも最大で12万円の控除が上限になってしまうんだ。

なんだか損した気分なのね。
【地震保険料控除】地震保険料に関する控除
4つ目は地震保険料控除です。
地震保険料控除は、名前の通り、地震保険に対する保険料に対する控除になります。
控除額は支払った保険料の全額になりますが、上限があり5万円までになります。

平成18年までは損害保険料控除というものがあり、現在は経過処置として平成18年12月31日までに契約した長期損害保険の場合は1万5千円まで控除の対象になります。
しかし、地震保険料も加入している場合は合わせて5万円までの控除になります。
ステップ④その他所得控除の計算

確定申告が必要な所得控除
ステップ➃はその他所得控除の計算です
ここまでたくさんの所得控除を説明してきてお腹いっぱいかもしれませんが、まだ紹介していない所得控除がありますのでもう少しお付き合い下さい。
それは以下の3つです。
その他所得控除
❶雑損控除
❷医療費控除
❸寄付金控除
この3つの所得控除の適用を受けようとするためには、自分で確定申告をしなけけばいけません。(寄付金控除は確定申告しないでよいケースもある)
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会社から給料をもらっている人は会社が所得税を代わりに計算してくれて、1年間のうちに多く所得税を払っていた場合は会社から所得税を還付してもらったり、逆に足らない場合は不足金を本人から徴収して税務署に払ってくれる年末調整というイベントがあり、会社員は特に難しいことをする必要がないのです。
しかし、この3つの所得控除を受けたい場合は自分自身で所得税を計算する確定申告をする必要があるので覚えておきましょう。
それでは順番に解説していきます。
【雑損控除】災害等で被害にあった場合に適用される控除
1つ目は雑損控除です。
雑損控除は、地震や家事、台風などの風水害や盗難、横領などで被害を被った時に受けられる控除項目になります。

控除を受けられることはいいんだけど、できれば受けたくない控除なのね。
控除額は次の2つの内大きい方の金額になります。
①差引損失額 - 総所得金額等 × 10%
②差引損失額のうち災害関連支出の金額 - 5万円
差引損失額とは損害金額に損害の原状回復のためにかかった費用などを足して、保険金などをもらった場合はそれを差し引いたものになります。
例えば、差引損失額が100万円で総所得金額等が200万円だった場合は、計算すると①が80万円になり、②は95万円になるので95万円が雑損控除として適用を受けることができます。
また損失額が大きく、所得から控除しきれない場合は翌年以降3年間を限度に控除することができます。

ちなみに恐喝や詐欺の場合は雑損控除の対象になりません。
【医療費控除】一定以上の医療費があり、2種類の控除がある
2つ目は医療費控除です。
医療費控除は、納税者本人や生計を一にする配偶者や扶養親族の医療費を支払った時にその金額が一定以上の場合に受けることができる控除です。
さらに医療費控除は2種類に分かれます。
1.通常の医療費控除
2.特例の医療費控除(セルフメディケーション税制)
通常の医療費控除は以下の計算式で求められます。
(支払った医療費の金額−保険金などで補填される金額)−10万円※=医療費控除額
※総所得が200万円以下の場合はその金額×5%
支払った医療費とは、病院の診察代と治療代や通院のための交通費、出産費用などが含まれます。
保険金などで補填される金額とは、民間の生命保険等に加入しており入院給付金や公的保険の高額療養費の還付金、出産一時金などがあった場合はその金額を支払った医療費から差引きます。
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そしてその差し引いた金額から10万円を引いた金額が通常の医療費控除の金額になります。 また控除額の上限は200万円までになります
仮に医療費が30万円で保険金などの補填金額が8万円の場合、差し引きすると22万円になり、そこから10万円を引いた12万円が医療費控除になるということです。
また、所得が少ない人の場合は総所得の5%をかけたものが10万円より少ない場合は、最後に10万円を差し引くのではなく、その総所得の5%の金額を差し引くので同じ条件の場合でも医療費控除の金額が増えます。

例えば総所得が100万円の場合は、5%をかけると5万円になり、先ほどの例でいくと12万円円の医療費控除が17万円に増えます。【(医療費30万−補填金額8万)ー5万=17万】
特例の医療費控除は2017年からスタートしたものでセルフメディケーション税制と言われています。
これは、簡単にいうと薬局などで処方せんがなくても購入できる一般の医薬品の購入金額が一定程度を超えた場合に受けられる医療費控除です。
一定の購入金額というのは12,000円になります。
つまり通常の医療費控除は基本的に10万円を超えた医療費に対して控除されますが、セルフメディケーション税制はそれよりも低いので通常の医療費控除よりは比較的に使いやすいです。
しかし、控除の上限は88,000円までになりますので覚えておきましょう。
そして、対象になる医薬品は医療用医薬品で使われる薬効82成分が含まれている医薬品になります。
セルフメディケーション税制の対象かどうかは商品のパッケージや領収書などに識別マーク(以下のマーク)や記号や説明が記載されています。

例えば、頭痛薬のバファリンはセルフメディケーション税制の対象になりませんが、バファリンプレミアムは対象になります。
理由は先ほどの82成分が含まれているかいないかですので、分からない場合はパッケージなどで確認するか店員さんに聞いてみましょう。
セルフメディケーション税制対象外
セルフメディケーション税制対象
そして、注意していただきたいのが通常の医療費控除と特例の医療費控除は併用できませんので、もし使う場合はどちらかを選択することになりますので覚えておいて下さい。

もう一つ注意点として控除を受ける場合は、領収書等がいることです。
但し、マイナンバーカードと健康保険証を一体化した場合は今後は領収書がいらなくなります。詳しくは下記の記事で確認して下さい。
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【寄付金控除】ふるさと納税などをした場合に受けられる控除
3つ目は寄付金控除です。
寄付金控除は、国、地方公共団体や一定の公益法人に寄付した場合に受けられる控除です。
わかりやすいケースはTVやCMで宣伝しているふるさと納税です。
ふるさと納税をした場合もこの寄付金控除の対象になります。
寄付金控除は、次のいずれかの低い方の金額から2000円を引いたものが控除の金額なります。
1.支出した寄付金の額
2.総所得金額の40%
例えば、寄付した金額が10万円で総所得が100万円の場合は、総所得金額の40%は40万円なので、この場合は寄付した金額の10万円の方が小さいので、寄付金控除額は98,000円(10万円-2千円)になります。

ふるさと納税をした自治体が、5自治体までであればワンストップ特例制度というものが使うことができ、確定申告をせずに寄付金控除を受けることができます。
また、ふるさと納税をした場合には住民税からさらに控除される仕組みになっています。
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ステップ⑤課税所得の計算

給与所得から所得控除の合計を差し引く
ステップ⑤は課税所得の計算です。
このステップは簡単で、給与所得から今まで説明してきた、人的控除、保険料控除、その他所得控除の合計金額を差し引くだけで求めることができます。
例えば給与収入が300万円の場合の給与所得控除が98万円【300万円×30%+8万円】になり、給与所得が202万円になります。
そして仮に人的控除が86万円、保険料控除が45万、その他所得控除が11万円の場合は所得控除の合計が142万円になり、課税所得は202万円から142万円を差し引き、課税所得は60万円になります。

これは簡単なのね♪
ステップ⑥算出税額の計算

【累進課税】課税所得に7段階の税率をかける
ステップ⑥は算出税額の計算です。
算出税額は課税所得に所得税率をかけることで求めることができます。
日本の所得税は累進課税制度という制度が適用され、課税所得の大きさによって税率が変わる方式を採用していいます。
課税所得の大きさと税率は以下のとおりです。
例えば課税所得が60万円の場合は算出税額は3万円【60万円×5%】になり、課税所得が400万円の場合は372,500円【400万円×20%−427,500円】になります。
このように課税所得が大きくなればなるほど、税率もどんどん上がっていきます。

いっぱい稼いでも最大で45%近くも税金がとられるなんて何か悲しいのねん。
ステップ⑦税額控除の計算

税額控除は節税効果が高い
ステップ⑦は税額控除の計算です。
税額控除とは算出税額から直接税金を差し引くことができるのでこれまで説明した所得控除と比べて節税効果が非常に高いことが特徴です。
税額控除は、以下のような項目があります。
税額控除
・配当控除
・住宅借入金等特別控除
・住宅耐震改修特別控除
・住宅特定改修特別税額控除
・外国税額控除
・分配時調整外国税相当額控除
・政党等寄付金特別控除
・認定NPO法人等寄付金特別控除
・公益社団法人等寄付金特別控除など
上記の項目以外にも税額控除はたくさんあります。
どの項目も税額控除なので、算出税額から控除することができます。
すべてを解説すると膨大な量になりますので、今回の記事ではよく使われる配当控除と住宅借入等特別控除の解説をしていきます。
【配当控除】総合課税を選択した場合に受けられる控除
配当控除は株式などの配当金を一定の条件で受け取った場合に受けられる控除になります。
一定の条件で受け取るとは配当金の受け取りを総合課税方式に選択した場合になります。

総合課税って何?
株式などの配当金を受け取る場合に、税金の徴収方法を選択することができる制度があるのですが、その制度というのが大きく2つに分かれます。
1.総合課税
2.申告分離課税
配当金は配当所得という所得にグループ分けされるのですが、総合課税とは他の所得と合算して税金を計算する方法です。
例えば、給与所得が100万円あって配当所得が20万円の場合、総合課税の場合、給与所得と配当所得を合算した120万円から税金を計算する方法です。
一方で申告分離課税は他の所得と合算しないで、配当所得だけで税金を計算する方法になります。
日本の上場企業からの配当金で申告分離課税をすると、所得税と住民税を合わせて約20%(所得税15.315%住民税5%)の税金が一律でかかります。
申告分離課税のメリットはどれだけ配当金をもらっても、一律の税率になります。
先ほどの所得税の速算表を見ていただくと、所得税の最大の税率が45%なので、それと比べるとかなり低い税率になります。
しかし、課税所得が高くない場合はかえって税率が高くなります。
ですので配当金をもらえる人は、自分の課税所得に合わせて、この総合課税と申告分離課税の選択を自由にすることができます。
そして総合課税を選択した人は配当控除の適用を受けることができます。
配当控除の計算は以下の通りです。
配当控除額=配当所得×10%※
※課税総所得が1,000万円以下の場合
例えば、配当所得50万円の場合は、5万円(50万円×10%)の税額控除を受けることができます。
但し、課税総所得が1,000万円を超えた場合は、その超過部分は5%の配当控除になります。
仮に課税総所得が1,050万円でそのうち配当所得が100万円の場合は、50万円は10%で計算し、1000万円を超過している50万円の部分は5%で計算するので、この場合の配当控除は7万5千円【50万×10%+50万×5%】になります。
【住宅借入金等特別控除】住宅ローン残高に対する控除
続いて住宅借入金等特別控除について解説していきます。
住宅借入金等特別控除とは住宅ローンの残高に対して一定の控除を受けられる制度で住宅ローン控除とも言われています。
この控除を受けるためには、住宅ローンを利用して家を購入する必要があります。
購入した家が中古や長期優良住宅や低炭素住宅などによって控除できる限度額などは変わってきます。
基本的には10年間の控除を受けることができ、残高に対して1%の税額控除を受けることができます。
新築の一般住宅の場合は残高の上限は4,000万円になっており仮に残高が4,000万円の場合にはその1%の40万円の税額控除が受けることができます。
それを10年間適用できるので、残高が多ければ最大で400万円近くの所得税を節税できます。

中古住宅の場合の残高上限は2,000万円、耐震性など一定の基準を満たした長期優良住宅や低炭素住宅は5,000万円になっています。
また2019年の1月から消費税増税に伴い、一定の条件の住宅を一定の期限(2021年時点では2022年12月31日まで)までに入居した場合には10年の控除期間が13年に延長されています。
また住宅借入金等特別控除を受ける初めての年(入居した年の翌年)は確定申告が必要になってきますので覚えておきましょう。
2回目以降は会社の年末調整で控除することができます。
住宅借入金等特別控除の金額は大きいので、住宅を購入する際には覚えておきましょう。
ステップ⑧納付税額の計算

算出税額から税額控除を差し引く
ステップ⑧は納付税額の計算です。
納付税額は算出税額から税額控除の合計を差し引くことで求めることができます。
例えば、算出税額が50万円、税額控除である配当控除が5万円、住宅借入金等特別控除が30万円の場合は税額控除の合計が35万円になるので、納付税額は15万円になります。

あと少しで計算が終わります。もう少しなので頑張って下さい。
ステップ⑨復興特別所得税額の計算

ステップ⑨は復興特別所得税の計算で、最後のステップになります。
所得税の納付税額の計算が終わって、通常であればこの金額の所得税を国に納めて終わりなのですが、2011年の東日本大震災で多くの人や町が被害を受けました。
そして、復興を支援する目的で財源を確保するためにできたのがこの復興特別所得税です。
復興特別所得税は、納付税額に2.1%の税率をかけます。
例えば納付税額が10万円だった場合は、復興特別所得税は2,100円になります。
ですので、国に納める所得税の合計額は、この場合、通常の所得税10万円と復興特別所得税の2,100円を足した102,100円になるということです。
ここまでが所得税の計算の流れになります。

復興特別所得税の制度は2013年から2037年までとなっています。
まとめ:一つずつ分解すると理解がしやすい
それではまとめに入りましょう。
これまでの計算の流れを下記に図解で掲載します。
給与所得者の所得税計算の流れのまとめ
❶給与収入から給与所得控除を差し引いて給与所得を計算する
❷給与所得から人的控除、保険料控除、その他所得控除を差し引いて課税所得を計算する
❸課税所得の大きさによって7段階の税率をかけて算出税額を計算する
❹算出税額から税額控除を差し引いて納付税額を計算する
❺納付税額に2.1%をかけて復興特別所得税額を計算し、合算して所得税を納付する
いかがでしたでしょうか?
所得税を計算するにあたって多くの手順があると感じられたと思います。
一見すると難しいように思えますが一つ一つ分解して手順に沿ってやっていくと、そこまで難しくはなかったと思います。
会社で給料をもらっていると、所得税の計算まで目にいく人はそこまでいないと思います。
しかし、税金を納めている以上は社会人も立派な納税者です。
だからこそ、自分が払っている税金の仕組みをしっかり理解する必要があります。
理解することで、さまざまなことに繋がっていきます。そして仕組みを知らないがために多くの税金を払ってしまうこともありますので最低限の知識を学ぶ必要はあると思います。
少しでもこの記事が参考になれば嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。