こんにちわ!ぎょうざです。
前回の記事では相続の基礎知識について書かしていただきました。
その中で誰が、相続財産を引き継ぐ権利がある人や、引き継ぐ優先順位についても解説させていただきました。
しかし今回のお話は、その権利があっても、ある方法を使うと他人のもとへ財産がいってしまうこと、そしてその場合に阻止することができる方法がないかを解説していきたいと思います。
それではいきましょー

え!?家族がもらえないことなんてあるの?

本来は、家族が財産を引き継ぐんだけど、他人に財産を引き継いでもらう方法も実はあるんだよ。

えー!!家族の人かわいそうなのね。

そうだね。だからこそ今回の内容をしっかり勉強して、どうしたらいいか考えようね。
この記事を読むと分かること
遺言の3つのポイントと遺贈につてい分かる
3種類の遺言についてのメリットデメリットについて分かる
遺留分についての概要と計算方法について分かる
遺留分減殺請求による財産の取り戻し方法が分かる
本記事の信頼性
・現役の経営者で複数の会社を経営
・お金の専門資格のFP1級とCFPを保有
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遺言と遺贈とは?

親族の方が亡くなって、通常であれば、配偶者と血縁関係者の中で優先順位が高い人に相続財産が引き継がれることが通常の相続になりますが、
亡くなった人、つまり、被相続人が生前に以下のようなことを考えることが稀にあります。

わしの家族はみんな冷たいし、看病にはなかなか来てくれないの。
それに加え、愛人のニクマンパンダちゃんはいつもわしのお見舞いにきてくれて素敵な笑顔でわしを癒してくれるし、かわくてしょうがない。
よし!わしの相続財産はすべてニクマンパンダちゃんに渡そう。

ニクマンさん愛している
家族がいるのに、愛人がいることはけしからんことですが、上記のように考える人もいるかもしれません。
通常であれば相続財産は家族に引き継がれるのが普通ですが、ある方法を使うと自分の財産を引き継ぐことを自分の意思で指定できるのです。
それを遺言といいます。
そして遺言により相続財産が移転することを遺贈(いぞう)といいます。
遺言の3つのポイント

遺言は、生きている時に自分の意思を残しておくものです。
似たような言葉で遺書というものが、ありますが遺書の場合には死ぬ直前に残すもので、遺言のようにあらかじめ意思表示したものとは意味が違います。

よくドラマとかで出てくるやつですね。
あくまでの直前ではなく、生きている間に意思表示をするものです。
そして、この意思表示をするにあたってそれを何かしら形で意思表示を残さなければなりません。
自分の頭の中で考えているだけでは、意思表示はできませんので紙など誰でも見えるものに自分の意思を示します。
これを遺言書といいます。
つまり、自分の財産等の行方をこの遺言書に書くことになります。
遺言には3つのポイントがあります。
遺言のポイント
❶満15歳以上で自分のした行為を判断できる意思能力を持っていること
❷遺言の内容はいつでも変更できること
❸複数の遺言書が出てきた時には新しい方を優先すること
遺言は誰にでもできることではありません。
ポイント① 遺言には年齢制限がある
1つめのポイントとして、年齢に15歳以上という最低限の制限をかけています。
理由は、ある程度の年齢に達していないと、財産の内容等を判断する能力が不十分だからです。
例えば、以下のような場合だと危険と判断されます。

ぼくちんのお父さんはめちゃくちゃお金持ちだったけど、僕が生まれた時にはすでに亡くなっていたのね。
僕とたまに遊んでくれるおじさんが、僕はお父さんのお金をいっぱい持ってると教えてくれたよ。
おじさんのこと好きだから、僕が死んだら、お金をあげてもいいのね。
極端な例ですが、財産を持っている人が小さい子供の場合、正確な判断ができません。
ですので、年齢制限を設けているのです。
また年齢はクリアしていますが、精神的な理由で正確に意思表示ができない場合も遺言ができる人ではないと判断さます。

例えば、精神的な障害があった場合でも、その障害が回復した場合は遺言は可能だと判断されます。
しかし、判断してもらうためには医師が複数で立会い、遺言ができる状態だと証明してもらう必要があります。
ポイント② 遺言の変更はいつでも可能
2つめのポイントは、遺言の内容はいつでも変えられることです。
理由は遺言は亡くなった時に、初めて効力が発生するからです。
つまり、亡くならない限りは内容はいつでも変更が可能だということです。
また遺言書を作成した場合には、一部だけ変更することも全部を変更することもできます。

人の心はコロコロ変わるもんね。
ポイント③ 複数の遺言書は新しい方が優先
3つめのポイントは、遺言書が複数出てきたときにどうするのかです。
稀なケースですが、相続の時に遺言書が出てきてその遺言書には

わしの財産はA子ちゃんにすべてあげるのじゃ
と書いてあり、A子ちゃんは自分がもらえるものだと思っていたのに、後日に

わしの財産はB子ちゃんにすべてあげるのじゃ
という新しい遺言書が出てきた場合に、どちらの意思が正しいのかが困惑してしまいます。
その時に優先されるのは日付が新しいものになります。
当然、古い意思決定より新しい意思決定の方が信憑性がありますし、古い遺言書は取り消されたとされます。
また日付がない遺言は原則、無効となりますので、片方は日付ありで、もう片方が日付がない場合は日付がある方が優先されます。
3つの遺言の種類

では次は遺言の種類を見ていきましょう。
遺言は次の3つの種類があります。
遺言の種類
❶自筆証書遺言
❷公正証書遺言
❸秘密証書遺言
各遺言によぅて特徴が違うの1つずつみていきましょう。
種類① 制約が少ない自筆証書遺言
自筆証書遺言は、その名のとおり、亡くなる本人が、自分で書く遺言書になります。
そして、遺言書に書く紙や実際に書くペン等にも制約がありません。
身近にあるノートでも遺言書のかわりになります
つまり、筆と紙とペンと印鑑さえあればすぐにも遺言書の作成ができるのです。
簡単に作成ができ、費用がかからないとといったメリットがある一方で、デメリットもあります。
それは、無効になりやすい点と発見されにくいといった点でデメリットがあります。
理由として、遺言書にはそれが有効になるルールがあるのですが、自筆証書遺言は自分で作成するのでどうしても作成のミスにより、無効となる可能性が高くなります。
日付や印鑑や氏名が書かれていない場合は無効になるので、第3者のチェックがない為、そういったリスクもあります。
また、偽造されやすいのも特徴のひとつです。
また遺言を正しく書くことができたとして、遺言の存在が誰も知らない場合は発見されない限り、その遺言書の効力は発揮されませんので、そういったリスクもあります。
また発見した相続人や、遺言書を保管している人は遺言書を家庭裁判所に持っていき検認という手続きをとらなければなりません。
検認とは、遺言書の内容を確認して、遺言書の存在を相続人に知らせるとともに、遺言書の偽造や変造を防止するための手続きのことで、自筆証書遺言の場合は、この検認をすることが必要になります。

紛失や偽装リスクを予防する為にも令和2年7月から法務局が遺言書を預かってくれる遺言書保管制度といものが始まりました。
手数料として3900円かかりますが、こういった制度を活用することでデメリットはある程度軽減できます。
種類② 紛失や隠蔽リスクのない公正証書遺言
公正証書遺言は、公証人という法律に精通した公務員の人に作成してもらう遺言書になります。
特徴しては、やはり役所で作成するので偽造や紛失のリスクがなく、作成してもらうので無効になることもありません。
また先ほどの検認の手続きが不要なため相続人に負担がかかりません。
先ほどの自筆証書遺言のデメリットを克服した遺言書になります。
安全性が高い一方で、デメリットとして費用が高いことと手間がかかることがあげられます。
しっかりとした所で作成してもらうので費用が当然かかってきます。
費用は遺言書に記載する財産の金額によって違います。
ちなみ財産が1000万円を超えて、3000万円未満の場合は2万3000円になります。
また作成するにあたって、作成の立ち合い人である証人が2人必要な点もこの公正証書遺言の特徴です。
そういった意味でも手間が自筆証書遺言よりはかかるという点がデメリットとしてあげられます。

証人が見つからない場合には、有料で公証人役場で紹介していただけます。
種類③ 内容を秘密にする秘密証書遺言
秘密証書遺言は、遺言の内容を秘密にしたままにして、遺言書があるという事実だけを公証人役場で認証してもらえる遺言書になります。
メリットしては、相続が発生するまでは内容を誰にも知られないという点があげられます。

あけてみるまでは、分からないドキドキ感があるということだね。
デメリットは費用と手間がかかることと、公正証書遺言とは違い検認の手続きが必要な点があげられます。
また、遺言を公開するまで内容が分からないので、必要事項が抜けており無効になる可能性もあります。

秘密証書遺言は実務では、ほとんど使われていません。
遺留分

最低限の遺産を受け取れる権利
ここまでで、遺言についての理解はできたと思います。
そして、ここからから本題です。
遺言によって、血縁関係者以外の他人にすべての財産を渡すと書かれた場合にどうなるかということです。
実際に一緒に暮らしている家族が遺言の存在を知らずに、ある日、生活を支えていた夫が亡くなってしまい、その後に家族以外の他人にすべて財産を託すという遺言の存在が明らかになってしまった場合に、家族は生活ができなくなってしまいます。
夫が亡くなったことで、遺族年金を受給することができるかもしれませんが、それでも生活に影響を及ぼすことは間違いないです。
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年金についての最低限の知識を備えよう!3つの年金についてわかりやすく解説!
そこで、本来の相続人が必要最低限の遺産を受け取れるように民法で定めました。
これを遺留分といいます。

そんなすごい制度があるんだね。
遺留分を受け取れるのは配偶者、子、直系尊属
では、この遺留分を誰が受けとることができるのかいうと、それは下記のとおりです。
遺留分を受け取れる人
❶配偶者
❷子
❸直系尊属
ここでお気づきの方がいるかもしれませんが、兄弟姉妹はこの遺留分の対象者から外れていることです。
兄弟姉妹は相続人になれても、遺留分はない
相続人の優先順位は、配偶者は常に相続人になり、そのあと第1順位が子、第2順位が父母や祖父母といった直系尊属、第3順位は兄弟姉妹となっていますが、遺留分の権利は兄弟姉妹にはありません。
遺留分の対象から外れる理由として、血縁が遠いという理由と相続の優先順位が低いためです。
例えば、相続が発生して被相続人(亡くなった人)に配偶者と兄弟姉妹はいるけれど、子も直系尊属もいない場合の相続人は配偶者と兄弟姉妹になり、遺産を受け取れるのですが、兄弟姉妹は遺留分がないため、遺言が出てきた場合は遺産はもらえなくなる可能性があるということです。
遺留分の割合は1/2と1/3
では、遺留分の割合はどれくらいあるのかについてお答えしていきます。
配偶者と子どもは本来もらえる財産の1/2が遺留分の割合になり、直系尊属は本来もらえる財産の1/3が遺留分の割合になります。
そして本来もらえる財産とは、法定相続分で計算した金額になります。
配偶者と子と直系尊属の法定相続分は以下のようになっています。
法定相続分
●配偶者のみ
すべて
●配偶者と子
配偶者1/2 子1/2
●配偶者と直系尊属
配偶者2/3 直系尊属 1/3
法定相続分や優先順位を知りたい方は下記の記事をご覧になってください。
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亡くなった場合の財産はどうなる?相続が争族にならないように基礎知識を学ぼう!
例えば、配偶者と2人の子が相続になった時の遺留分は、
配偶者=1/4(法定相続分の1/2×遺留分の割合1/2)
子供(1人あたり)=1/8(法定相続分の1/2× 人数1/2人×遺留分の割合1/2)
になります。
遺留分の計算を実際にしてみよう
では、実際に例として財産が9000万円ある場合で、遺留分の額を計算してみましょう。
9000万円の遺産での遺留分
❶配偶者と子供が4人いた場合の遺留分
配偶者:2250万円
計算方法=9000万×1/4 ( 法定相続分の1/2×遺留分の割合1/2 )
子は1人あたり:750万ずつ
計算方法=9000万×1/12 (法定相続分の1/2× 人数1/4人×遺留分の割合1/2)
❷配偶者と父がいた場合 の遺留分
配偶者:3000万円
計算方法=9000万×1/3 ( 法定相続分の2/3×遺留分の割合1/2 )
父母1人あたり:500万ずつ
計算方法= 9000万×1/18 (法定相続分の1/3× 人数1/2人×遺留分の割合1/3)
になります。
法定相続分に人数をかけてさらに、決まっている遺留分の割合をかけることで遺留分の金額がでます。
つまり、上記の金額は遺言があっても最低限度保障されているということです。
侵害してきた遺留分を遺留分減殺請求で無効にする

ここまでで遺留分の計算方法について学習してきました。
では、最後に実際に遺言で遺留分を侵害してきた場合のケースを見ていきましょう。
遺言がなく、通常の相続であれば遺留分のことは気にせずに、決まった法定相続分とおりの遺産を各血縁関係者が引き継ぎますが、これまで見てきた遺言で全額、他人に遺産を渡すと書かれた場合は、最低限の遺産の権利である遺留分を侵害してくることになります。
この時に手続きを取ることで侵害してきた遺留分を取り返すことができます。
この手続きのことを遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)と言います。

何か必殺技みたいでかっこいいのね。
たとえば、先ほどの例と同じように被相続人の遺産が9000万円あるとします。
そこで被相続人が生前に遺言で

わしの9000万円の全財産は、ニクマンパンダちゃんに渡すものとする
と書かれた遺言があったとします。
そうなると遺言で引き継ぐようになったニクマンパンダちゃんは

ありがとう!ニクマンさん!!
引き継いだ9000万の財産は大切にするわ!
という風に思うはずです。
しかし、配偶者であった妻からすると

子供も1人いるのに、すべての財産を赤の他人のニクマンパンダって子に渡すなんで信じられない。
ニクマンパンダさん、悪いけど財産は私と息子にももらう権利があるのよ。
そんなこと言っても無駄よ。
遺言にニクマンさんは私にすべての財産を渡すって書いてあるからこの事実は変えられないわ。


お母さん、ニクマンパンダさんは、すべての財産を自分だけのものにしようとしているから、こうなったら2人で遺留分を侵害していることを請求するしかなさそうだね。

そうね!いたしかない。
私の遺留分2250万円と息子の2250万円の遺留分を返してもらうわよ。
くらいなさい!

遺留分減殺請求ーーーーー!!!!
いやー!!!なんて攻撃なの!?
私の9000万円が半分の4500万円になってしまったわ。

と、ちょいとふざけすぎましたが、これが遺留分減殺請求になります。
このように遺留分を侵害している部分は相手へ請求して、取り戻すことができるのです。

請求方法としては、内容証明郵便で請求したり、話し合いで解決できなかった場合は家庭裁判所において、調停委員も交えて、話し合いによる調停を行います。
遺留分減殺請求の時効
もう一つ注意しておきたいことが遺留分減殺請求権には時効があることです。
つまり、遺留分を侵害されているのに、請求せずにほっておいてしまうと請求する権利がなくなってしまうということです。
時効は相続の開始及び遺留分の侵害を知った日から1年以内になります。
また相続の開始を知らなかった時は、相続の開始から10年になりますので、そのことを覚えておきましょう。
まとめ:自分の相続の権利について知っておくことが大切
それではまとめに入ります。
まとめ
遺言は15歳以上、いつでも変更可能、複数の場合は新しい方を優先するというルールがある
遺言の種類は、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類がある
自筆証書遺言はコストは安いが安全性が低く、逆に公正証書はコストは高いが安全性が高い
遺留分は最低限の遺産を受け取れる権利であり、配偶者と子は1/2で直系尊属は1/3
侵害してきた遺留分があれば、遺留分減殺請求を使い遺産を取り戻せる
遺留分減殺請求権には時効があり、何もしないと取り戻せなくなる
こうした、法律で認められている権利については、やはり知っておくことが大切だと思います。
大げさではなく、知っているか知っていないかで大きく自分の人生が変わることもあると思います。
相続の細かいところに関しては専門家に相談するのもありだと思いますが、大まかな内容については、専門家でなくても理解することができます。
ですので、ちょっとずつでもいいので、お金に関する知識について勉強していき、自分自身の知識にプラスアルファしていただけると幸いでございます。
まだまだこのブログ上でお金に関する内容を発信していきますので、お時間があるときにこのサイトにきていただけたらと思います。
少しでもこの記事が参考になれば嬉しいです。