こんにちわぎょうざです。
今回は社会保険料の計算方法について解説します。
特に企業にお勤めの方やこれから社会人になる人は必ず覚えておいてほうがいいです。
この社会保険の計算方法をしっかり覚えることで手取りの金額を増やせるかもしれません。
そして4月から6月の時期に残業を多くしてしまうと、結果的に手取りが減ってしまう可能性があるのでそれについて解説していきます。
それではいきましょー

残業したらお金が増えるんじゃないの?

基本的には残業することで残業手当がつくから収入が増えるんだけど、4月から6月まで残業をしすぎるとかえって手取りが減ってしまうかもしれないんだよ。
その理由も含めて解説してくね。
本記事を読むとわかること
社会保険料の計算方法が分かる
標準報酬月額について理解できる
なぜ4月から6月の時期の残業が危険なのかが分かる
手取り収入を下げない方法が分かる。
本記事の信頼性

ぎょうざ (@gyouza_maney)
この記事を書いている僕は、社会保険の専門家である社会保険労務士の資格を保有しており、現在は複数の会社を経営しております。
3つの社会保険

健康保険、介護保険、厚生年金が給料から天引きされる
社会保険の計算の前に、社会保険とは何なのでしょうか?
過去の記事で社会保険の基礎について書きましたので、まだ読まれていない方は一度ご覧になってからこの記事を読むとさらにわかりやすいと思います。
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これだけ抑えておけば大丈夫!社会保険について理解しよう!
一般的に社会保険は健康保険と介護保険と厚生年金(3つを合わせて狭義の社会保険と言います)のことをいいます。
会社にお勤めで、社会保険に加入している方は自分の給料明細を見ていただくと上記の3つの保険の保険料が掲載されていると思います。
イメージしやすいように給与支給明細書を例で下記に掲載します。黄色に塗りつぶした部分が3つの保険料です。


介護保険料は40歳以上65歳未満の人が給料から引かれ、65歳になると年金から引かれます。
今回のこの3つの保険の保険料について詳しく書いていきたいと思います。
社会保険料の計算方法を理解しよう

では実際に社会保険料がどうのようにして計算されるか見ていきましょう。
まず結論を言いますと社会保険料の計算は以下のとおりです。
社会保険料の計算式
標準報酬月額×各保険料率
上記の内容だけ見ると非常にシンプルですね。
都道府県ごとの保険料率と全国一律の保険料率
先に各保険料率ですが、健康保険料率と介護保険料率は都道府県ごとに違います。理由は都道府県ごとに必要な医療費が違うからです。
また医療費も年によって変わってくるので、毎年3月分(4月納付分)から保険料率が変更される場合が多いです。
ちなみ2021年3月分(4月の給料から引かれる保険料から適用)の健康保険料率は9.5%~10.68%(全国平均は約10%)、介護保険料(40歳以上65歳未満)は全国一律で1.8%になりました。
もし自分の都道府県の保険料率を知りたい人はこちら(協会けんぽHP)を見て下さい。
次に厚生年金の保険料率ですがこちらは平成29年9月分から一律で18.3%になっています。

実は昔と比べて保険料率はかなり高くなっています。
つまり各保険料率を足し算すると約30%になります。(健康保険料率9.5~10.68%+介護保険料1.8%+厚生年金保険料料率18.3%)
そして会社にお勤めの場合は、会社が半分保険料を支払ってくれるので給料から引かれる保険料率は約15%になります。
例えば標準報酬月額が30万の場合で上記の式にあてはめると、各保険料率合計の半分である約15%をかけた4万5千円程度がお給料から引かれることになります。

計算は簡単そうだけど、ところで標準報酬月額【ひょうじゅんほうしゅうげつがく】って何なの?
報酬月額の金額に応じて決まる標準報酬月額
では、標準報酬月額について解説していきましょう。
社会保険には報酬月額というものがあります。
単純に名前だけ見ると標準報酬月額の標準の部分を除いただけなのですが、これは簡単にいう会社が社員さんに支払う給料のことを言います。
報酬月額は労働の対象として会社から受けるものすべてものを言い、基本給、残業手当、住宅手当、通勤手当、役職手当、家族手当などが報酬月額の対象に含まれます。
逆に賞与(年に3回まで)や臨時に受けるものは報酬月額の対象になりません。

賞与が年に4回以上支給される場合は報酬月額に入ってしまいます。
また、臨時に受けるものとは見舞金や退職手当などがあてはまります。
先ほど例で表示した給与支給明細書で見てみると、総支給額合計の216,000円が報酬月額になります。
この報酬月額をもとにして標準報酬月額が決まるのです。

どうゆうこと?報酬月額と標準報酬月額は違うってこと?

実は社会保険では報酬月額の金額の大きさよって等級というものがあって、等級を表でまとめたものを標準報酬月額保険料額表というんだ。
そしてこの等級の区分ごとに金額が決まっていて、この金額を標準報酬月額というんだよ。
言葉で表すより先にその標準報酬月額の表を見てみよう。
私は兵庫県に住んでいるので、兵庫県の表を出してみるね。

お願いします。等級って言われてもよく分かんない。
これが標準報酬月額の等級表になります。さらにこの赤で囲った部分を拡大します。
まず報酬月額の列をご覧に下さい。
例えば、報酬月額が216,000円なら210,000円以上230,000円未満になるので青で囲っているところを見ます。
210,000~230,000の左隣の220,000に注目して下さい。
この220,000円が標準報酬月額になります。
さらにその左隣の18(15)と書かれている部分が等級になります。
等級は健康保険(介護保険も含む)と厚生年金の2種類があり、かっこ書きの部分の数字は厚生年金の等級になります。
ですので、表のみかたは報酬月額が216,000円の場合には、標準報酬月額は220,000円になり健康保険の等級は18等級で厚生年金の等級は15等級になるということです。

なんとなくわかったよ。報酬月額の大きさによって、等級と標準報酬月額が変わるってことだね。
でもさ、なんで健康保険の等級と厚生年金の等級が違うの?

いいところに目をついたね。
健康保険も厚生年金も標準報酬月額に下限と上限があってその金額が違っているんだ。
これも表を見ながら説明した方が分かりやすいから健康保険と厚生年金の等級が違う部分を拡大して見てみよう。
健康保険の等級と厚生年金の等級の違い
まず、下限の部分を見ていきましょう。
健康保険の下限の標準報酬月額は58,000円で厚生年金の下限の標準報酬月額は88,000円になります。
下限というのは、ある一定の金額を下回った場合には最低限この金額になりますよという意味で、例えば報酬月額が50,000円の場合には健康保険の標準報酬月額は58,000円になり、厚生年金の標準報酬月額は88,000円になるということです。
つまり、標準報酬月額は健康保険と厚生年金で分けて考える必要があります。
ちなみになぜ、厚生年金の下限の方が大きい数字なのかといいますと、厚生年金の中には国民年金の保険料が入っていると考えれば分かりやすいと思います。
会社員でなければ、国民年金の保険料を支払うのですが、2021年4月で月額16,610円になっています。
そして厚生年金の1等級の保険料は16,104円(厚生年金保険料の列の全額の部分)になり、国民年金の方が若干高いですが、近い数字になっているのが分かると思います。
続いて標準報酬月額の上限ですが、健康保険は50等級の1,390,000円で厚生年金は32等級の650,000円になります。
つまり報酬月額が200万円あったとしても、健康保険は139万円、厚生年金は65万円として保険料を計算することになるということです。

厚生年金の標準報酬月額上限の設定は、社会保険に加入している人の平均の標準報酬月額の2倍程度ときめられています。
今はだいたい平均が32万5千円なので、その2倍の65万円が上限になっています。
標準報酬月額の2つ決定方法

標準報酬月額について、ある程度理解できたと思いますので、今回の本題である残業してしまうと損をしてしまうかも知れない謎について解説していきたいと思います。
標準報酬月額を決定するルールが基本的には2つあります。
それは以下のとおりです。
標準報酬月額の決定
❶資格取得時決定
❷定時決定
入社時に決定する資格取得時決定
1つめが資格取得時決定ですが、これは会社に入って社会保険に加入することになるのですが、その時に会社は年金事務所にその人の報酬月額(給料)を報告します。
その報酬月額の報告を受けて実施機関がその人の標準報酬月額を決定するということです。
これが資格取得時の決定になります。
イメージは以下の感じです。
資格取得時決定の流れ
今日からこちらの会社で働くことになったニクマンです。よろしくお願いします。


よろしくね。ニクマンくんのうちでの給料は通勤手当なども含めて216,000円になるからね。
分かりました。頑張ります!


年金事務所さん!ニクマンという者を216,000円の報酬月額で採用することになりましたので、書類を提出します。
ニクマンさんの報酬月額を216,000円で受理しました。
報酬月額が216,000円なので標準報酬月額は220,000円になります。資格取得決定通知書を送らせていただきます。


年金事務所からニクマンくんの標準報酬月額の書いた紙(資格取得決定通知書)が届いたぞ。
標準報酬月額は22万円だから、今月のお給料から健康保険料11,264円と厚生年金保険料20,130円を引かさせてもらうね。
ちなみ介護保険料はニクマンくんは22歳だから0円だよ。
分かりました。

このような流れになります。
毎年に1回見直される定時決定
続いて定時決定について説明させていただきます。
定時決定は一般的には算定基礎とも言われています。
資格取得時決定などで標準報酬月額が決定した場合であっても定期的に標準報酬月額の見直しが行われるのです。
この見直しのことを定時決定といい、年に一度見直されることになります。
そして、この定時決定のルールは簡単にまとめると以下の通りです。
定時決定のルール
❶その年の7月1日に在籍している。
❷その年の4月、5月、6月の報酬月額の平均を出す。
❸❷で求めた平均から標準報酬月額を決定する。
❹決定した標準報酬月額はその月の9月(10月の給料)から適用される。
❶の7月1日に在籍していることですが、定時決定の対象者は7月1日に会社にいることが条件になっています。
当然7月1日の時点で会社にいない場合は定時決定の対象ではありません。
例えば、7月2日に入社した場合などは定時決定ではなく資格取得時決定の標準報酬月額になります。
❷~❹に関してはまとめて説明します。
この部分がもっとも重要です。
定時決定は、基本的に4月、5月、6月の報酬月額を見て平均値を出します。
定時決定の計算方法
例を出して見てみましょう。
定時決定の計算方法
4月の報酬月額・・・24万円
5月の報酬月額・・・25万円
6月の報酬月額・・・26万円
4月、5月、6月の報酬月額の平均=25万円(24万+25万+26万÷3)
平均の報酬月額から算出した標準報酬月額=26万円
上記のような感じで標準報酬月額を決定します。
4月~6月までのお給料を合計して3で割った値が25万円になり、先ほど見た標準報酬月額保険料額表を見てみて下さい。
25万円の報酬月額の欄を見ると26万円が標準報酬月額になります。
そしてこの標準報酬月額は、その年の9月(10月の給料)から新たに変更され来年の定時決定までは原則変更されません。

社会保険料は前月分を給料から引いています。
ですので新しい標準報酬月額での保険料は10月の給料から変更になります。
4月から6月に残業すると危険な理由
ここまで聞いて、ピンときた人も多いのではないでしょうか?
つまり、4月~6月に残業をしてしまうと報酬月額の平均が高くなってしまうのです。
そうするとどうなるのでしょうか?
これも例を出して見てみましょう。
22万の給料が通常である人がいるとして、4月に残業を2万円分、5月に残業を3万円分、4月に残業を4万円分したとしましょう。
残業代を足した金額は上記の定時決定の計算例と同じ数字になるので、新しい標準報酬月額は26万円になります。
残業をしなかった場合には標準報酬月額は22万円(4月22万、5月22万、6月22万)になります。
した場合としなかった場合で標準報酬月額に4万円の差(26万-22万円)が生まれました。
これを年間の社会保険料に直してみましょう。
保険料率は自己負担分で約15%になるので、それで両者の違いを見てみましょう。
①標準報酬月額22万円の年間社会保険料
約396,000円(22万円×15%×12ヶ月)
②標準報酬月額26万円の年間社会保険料
約468,000円(26万円×15%×12ヶ月)
①と②の差
約72,000円(468,000-396,000)
いかがでしょうか?保険料で約72,000円の差が出てきました。
給料として振り込まれる時は、額面の金額から社会保険料や税金が引かれて振り込まれます。
つまり、このケースでいくと残業をしなかっただけで、手取り金額が7万2千円増えるということになります。

7万2千円もあれば、どれだけの肉まんが買えることか、、、、。
でも、4~6月まで残業しなくても7月から残業したら、結局、標準報酬月額が上がってしまうのではないのかと心配される方もいると思いますが、結論は、、。
大丈夫です!
定時決定は一度決定されると、1年間は原則そのまま同じ標準報酬月額になります。
また社会保険には随時改定という制度があるのですが、簡単いうと給料が上がった場合に標準報酬月を再計算する制度なのですが、この制度もしっかりと理解して活用すると、たとえ残業などで給料が上がったとしても改定されません。
この制度に関してはこちらの記事で解説しています。
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標準報酬月額の改定のルールを理解しよう!3つの改定と注意点も解説!
計算を除外するルール
ここまで読んで、頭のいい人はあることに気付いた人がいるかもしれません。

4月~6月の間、会社を休みまくって意図的に給料を減らしたら社会保険料を安くできるんじゃね?
もしかしたらこのような考え方をした人もいるのではないのでしょうか?
こうすることで、4月から6月の給料を下げて社会保険保険料を下げれることができそうな気がしますが、、、。
実は定時決定には、計算を除外するルールがあります。
それは月の支払基礎日数(1日あたりに相当する欠勤控除がある場合は、簡単にいうと労働日)が17日未満の場合は計算の対象にしないルールがあります。

月給制の場合で欠勤控除がない場合は、支払基礎日数は各月の暦日(給料の計算期間)になります。
仮に20日締の会社で欠勤控除なしで月給22万円が出ている場合の4月給料(3月21日から4月20日)の支払基礎日数は31日になります。
欠勤控除がある場合では、仮に月給が22万円で1日の欠勤を1万円と設定している場合は、1日あたり22万の22分の1になるので、1ヶ月を22日と考えた上で欠勤の日を引いた数が支払基礎日数になります。
この場合に2万円の欠勤控除があった場合は支払基礎日数は20日(22-2)になります。
例えば、4月~6月の月の労働日を15日にして給料を下げた(欠勤控除の対象)場合には、定時決定の対象にせず従前の標準報酬月額のままにするといったルールがあります。
また4月~6月のうち、1ヵ月又は2ヶ月が17日未満の場合はその月を除いて計算するというルールがあります。
4月が22当務(支払基礎日数は31日)で22万円、5月が15当務で15万円(支払基礎日数は15日)、6月が22当務で22万円の場合は、17日未満である5月分を除いて、4月と6月の平均で計算します。(この場合だと4月の22万と5月の22万を合計して2で割った、22万円が標準報酬月額になる)

なるほどね。じゃあ、18日の当務にしたらある程度の給料を下げれるよね。
確かに、18日の当務の場合だと計算されるので標準報酬月額を低くすることができます。
しかし、その場合は先ほど少しふれた随時改定の対象になる可能性があり、標準報酬月額の再計算になるかもしれません。このあたりも次回の記事で解説していきます。
それに、現実的に考えて意図的に休むと会社が回らなくなる可能性もあるので難しいのではないかと考えます。
最後にあと2つ定時決定の計算から除外するルールがあるのですが、1つめが6月1日から7月1日までに資格を取得した場合です。
これは6月に資格取得時決定のために報酬月額を年金事務所に提出しているため、6月または7月の給料が標準報酬月額になり、その年の4月、5月の給料は出ていないので平均する必要がないためです。
2つめは7月から9月までに随時改定、育児休業等終了時改定又は産前産後休業終了時改定をした場合も定時決定の対象外になります。

あまり難しいことを言わないでおくれ。

随時改定、育児休業終了時改定、産前産後休業時改定についてはこちらの記事で解説しています。
あとがき:社会保険料が上がることで手取りが減る
今回は社会保険の計算方法や標準報酬月額の決定方法について見ていきました。
特に会社に入って間もない時に、やる気を会社に見せるために頑張って残業を無理にする人が意外に多いです。
そうすることでかえって社会保険料が高騰し、手取りが減ってしまう可能性があるので注意をしましょう。
また中小企業で多いのが、社長が社員にこの時期に何も考えずに残業をお願いしてくる場合があります。
その時は、こう言ってあげて下さい。

4月~6月に残業するとわしの社会保険料が上がってしまい、結果的に社会保険料の半分を負担している会社も負担が大きくなるで。
それでもいいんか?
会社の業務の都合により、難しいケースもあるとは思いますが、オブラートに上記の内容を言うことで会社から、「こいつはできるやつだ」と思われるかもしれません。(笑)
また標準報酬月額が下がることで、社会保険の保障も悪くなるのではと思われている方もいるかもしれませんが、これからこのブログを通して社会保険の給付についても色々と解説していきます。
そしてその記事を読んでいくことで標準報酬月額が下がることのデメリットが少ないことが分かるようになると思います。
そのためにも引き続きこのブログを読んでいただけますと幸いです。
この記事が少しでも参考になれば嬉しいです。
最後までお付き合いしていただきありがとうございました。