こんにちわGYOUZAです。最近、同一労働同一賃金というワードをよく聞きませんか?
2021年4月1日から中小企業でもアルバイトの人や有期契約労働者の人に対してこの制度が適用されました。
言葉は聞いたことがあるけれど、よく分からないという人や意味は知っているけれど、この制度の詳しい内容やその他メリットや問題点について知りたい人、経営者でこの制度に対応するための施策を知りたい人はこの記事を是非とも読んでいただきたいです。
それではいきましょー
同一労働同一賃金って何?
簡単に説明して


同一労働同一賃金とは、簡単に言うと同じ仕事の内容であるなら誰であっても給料は一緒にしなさいということだよ。
それって当たり前のことなんじゃないの?


それが、日本の歴史的観点から見てできていない企業が多かったんだよ。今日は歴史的な背景についても解説するね。
本記事を読むとわかること
同一労働同一賃金の制度について理解できる
同一労働同一賃金の歴史的背景が分かる
同一労働同一賃金のメリットと問題点が分かる
同一労働同一賃金の会社内の運用方法が分かる
本記事の信頼性

GYOUZA (@gyouza_maney)
この記事を書いている僕は、労務の専門家である社会保険労務士の資格を保有しており、現在は複数の会社を経営しております。
同一労働同一賃金について

同一労働同一賃金とは不合理な待遇差を解消する制度
まず、同一労働同一賃金の制度について解説します。
この制度は、正社員とそれ以外のパートタイム労働者や有期契約の労働者、派遣労働者について労働と賃金について比較を行って、それにより不合理な待遇差をつけることを禁止する制度のことをいいます。
つまり、正社員とそれ以外の労働者が同じ仕事の内容をしていた場合には、給料に差をつけることはできませんよ。ということです。
具体的に違反例を物語で見てみましょう
同一労働同一賃金の違反例
あるところに、商品を配送する会社がありました。
この会社は社長と配達員が2名いる会社です。
営業や経理事務は社長のカニ社長が行い、配送は正社員のGYOUZAとアルバイトのニクマンが行っていました。

おい!GYOUZA!A社まで配送の依頼が入っているから配送にいってきてくれ!
分かりました!社長いっていきます

次の日も同じA社から配送依頼が入り、今度はアルバイトのニクマンに配送を頼みました。

おい!ニクマン!A社へ配送にいってこい
分かったのね!社長!

そして給料日を迎えました。今回はGYOUZAもニクマンもA社への配送を10回ずつ行ったとして、配送時間も同じだとします。

GYOUZAは昔から働いていて正社員だから1回あたり1万5千円渡してやるか。10回行ったから15万が給料だ

ニクマンは最近入ったアルバイトだから1回あたり1万円だな。だから給料は10万円だ。
お分かりいただけましたでしょうか?
上記の例だとこの制度に抵触します。
なぜなら、仕事内容と働いた時間が同じだからです。
そのため、正社員だからといってアルバイトに比べ給料を多く渡すことは禁止されているのです。
ですので、この場合だとアルバイトのニクマンにも15万円の給料を渡さなければなりません。
大企業に続き2021年4月から中小企業も対象に
実はこの制度は2020年の4月から大企業では施行されています。
そして2021年の4月から中小企業でもこの制度が始まっています。

非正規の派遣社員の同一労働同一賃金は企業規模に関係なく2020年4月からスタートしています。
ですので、この対応ができていない中小企業は早急に対処する必要があるのです。
取り組むことが必要なのは以下の2点になります。
❶正社員と非正規社員との間で、給与や賞与などに対して不合理な待遇差の解消
❷社員に対する待遇に対する説明の強化

企業は非正規社員から、待遇についての説明を求められた場合にはきちんと説明する義務があります。
同一労働同一賃金の歴史的背景

元々はこの制度に企業は賛成だった
こういった制度がスタートする背景には、労働者サイドが企業に対して同一労働同一賃金を実施してほしいという要望がある場合や労働問題を改善するために改正させるもので、実際に今回もそういった背景のもとにこの制度がスタートしました。
実は、高度経済成長期以前の時代は、企業は同一労働同一賃金を取り入れようとしていたのです。
その一方で、労働組合はこの制度に反対していたのです。
しかし、戦後に高度経済成長期を迎えることになります。
高度経済成長期には同一労働同一賃金ではない制度の方があっていると企業も認めざるを得ない状況になったので、この議論はなくなりました。
では、そうなった背景を今から見ていきましょう。
日本型雇用3種の神器

みなさんは日本型雇用の3種の神器という言葉はご存じでしょう?
3種の神器って何かかっこいいのね。神様のスペシャルアイテムってこと?


意味は間違ってないよ。本体の3種の神器は、天皇皇位のしるしとして受け継がれてきたもので「鏡・勾玉・剣」のことで、これを日本的経営におきかえて表したものを日本型雇用の3種の神器と言われているんだ。
先に日本型雇用3種の神器を以下に書き出します。
日本型雇用3種の神器
●終身雇用
●年功序列
●企業別労働組合
この上記の制度のおかげで日本は戦後にめまぐるしいスピードで経済成長をすることができたのです。
戦争で多大なダメージを受けた日本は、海外に負けないように経済回復を成し遂げる必要がありました。
そこで、日本独自の経営手法で経済の立ち直りを図り、見事に経済成長を成し遂げ海外にも負けない国へと変化していきました。
その手法というのが、上記の「終身雇用」、「年功序列」、「企業別労働組合」なのです。
では、3種の神器について簡単に説明します。
1つ目が終身雇用ですが、これは「定年まで働き続けることができる」ということです。
2つ目が年功序列ですが、これは「勤続年数や年齢に応じて給料が上がっていく」ということです。
3つ目が企業別労働組合ですが、海外では基本的に職業や産業に応じて労働組合が作られますが、日本では企業ごとに労働組合を作るところが多く、それにより企業ごとの労働条件を交渉することができました。
そして、労働条件の改善によりその会社に長く在籍する動きが出てきます。
この3つの制度の共通点として、労働者の長期雇用を前提とする点にあります。
これが海外と違うところなのです。
海外のいわゆる欧米諸国は昔も今も給料は「職務給」をベースにした考え方で、いわゆる専門性が求められ、給料もその能力に応じて支給される給料体系なのです。

簡単に言うと実力主義になります。年齢や在籍期間は関係がなく能力がある人は給料が高くなり、能力がない人は給料が低くなります。
ですので、欧米諸国の場合はひとつの会社でずっと働くケースが少なく、自分の能力を評価してくれる会社へと移ることが多いのです。
一方、日本の場合は「職能給」をベースにした給料体系で、本来の意味は職務遂行能力に応じて給料が決まる制度で、知識や経験、技能や資格が評価の対象になります。
職務給との違いって何?

一見すると職務給も職能給も違いがなさそうに見えますが、日本の場合は先ほど述べた知識、経験、技能や資格を身につけるには、会社での職務経験が必須とされているのです。
別の言い方をすると会社で長期間在籍しないと、経験や資格を身につけることができないということです。
つまり、職能給は役職や勤続年数によって決まるということです。
これが、先ほどの「終身雇用」、「年功序列」、「企業別労働組合」に繋がっていきます。
日本型雇用が生まれた背景
では、なぜこの職能給制度を戦後に実施してきた日本は、経済成長を遂げることができたのでしょうか?
それは、戦後は企業を回復させ、業績を伸ばすことが急務だったからです。
業績を伸ばすためにはまず人材の確保が必要です。
そして、その人材を育て企業に技術を蓄積していかなければなりません。
技術を蓄積するには、人材の流出を防ぎ人材の長期定着が必要になります。
一方、労働者も戦争で生活が貧しい状況になっていたので安定した生活を求めていました。
つまり、長期間に渡って会社からお給料がもらえる状況を望んだのです。
この両者間のニーズがマッチしたので、年功序列や終身雇用などの制度が出来上がったのです。
そして、この制度のおかげで日本は経済成長をしていくことができ、日本型雇用の経営手法が海外から称賛されることになったのです。
職能給が時代に合わなくなってきた
高度経済成長を遂げ、日本は飛躍しました。
労働する人口も増え生活も豊かになり、医療も進化し、日本は経済大国へと変貌しました。
しかし、高度経済成長はいつまでも続きません。
時代の流れにより、労働環境は変わり、高年齢者の人達が増え少子高齢化といった問題を抱えることになります。
当然、環境が変化しているため高度経済成長期にうまくいっていた3種の神器も通用しなくなってくるのです。
まず、少子高齢化により労働人口の構成比が変化していきます。
いわゆる高齢な人達が増え、若い世代は昔と比べ減少していく状態です。
するとどうなるでしょうか?
年功序列や終身雇用というのは、若い世代ほど給料が少なく、高齢でベテランな人ほど給料が高くなる傾向があるので、言い方が悪いですが能力は非常に高く若い人でも給料は低くなり、能力はなくただ単に勤続年数が長いという理由だけで給料が高くなる傾向があります。
そして、企業にとってもベテランの人がどんどん増え、若い人が少なくなっているので、労働生産性が低下する恐れがあるのです。
また、近年は賃金が少ない人ほど多く働かせられたり、過労死などの痛ましい事件も増えています。
こうした背景から日本型雇用は変革を求められ、同一労働同一賃金の制度へと移り変わる必要性がでてきたのです。
同一労働同一賃金のメリットと問題点

ここまでの話を聞いて同一労働同一賃金の必要性は分かったと思います。
では、この制度のメリットと問題はどのようなものがあるのでしょうか?
労働意欲が増し、生産性が増す
まず、メリットから説明します。それは、この制度により仕事の内容が同じである場合には勤続年数に関係なく同等の給料を支払わなければならないので、不公平感がなくなります。
それにより、若い世代や非正規の労働者の労働意欲がアップします。
そして、基本的には仕事内容によって賃金が変わるので、キャリアアップの壁もなくなり、積極的に仕事を覚えようとしたり、仕事の幅を増やすために自ら努力する動きが出てくる可能性がでできます。
さらに、仕事に対する姿勢も変わり、若い人達の退職が減り、かつ能力の向上により企業の生産性の向上が期待できます。
仕事内容で給料が上がるなら、難しい仕事もできるように努力するのね。

-
-
お金とモチベーションの関係について考えよう!デシ理論について解説
-
-
仕事のやる気はアメを与えると上がる!?キャンディー効果について徹底解説!
労働者と企業の雇用機会が増える

2つめのメリットとして、労働者と企業の雇用機会が増えることがあげられます。
まず、労働者側ですが、結婚や子育てなどにより、働ける時間に限りがあるため正社員では働けないけれど非正規では働ける場合に、今までは非正規を理由に安い給料でしか応募がしていないために、働くことを断念していた人もいたと思います。
しかし、この制度により労働に見合った待遇になるため、こういった人材が非正規として働こうとする人が増えることが期待できます。
また企業側も、正規・非正規を問わず優秀な人材はたくさんいるので、会社内の待遇を公平にし、納得する給料体系を構築することで、労働者側からの信頼も生まれ、優秀な人材が集まりやすくなります。
人件費高騰により経営が苦しくなる
では続いて、この制度の問題点について解説していきます。
まず考えられるのが、人件費の高騰により会社経営を苦しくさせる可能性がでてきます。
具体的には、会社は社員に対して同じ仕事内容であるなら非正規であっても同じ賃金にする必要があるので解決方法は基本的に以下の2つになります。
①非正規社員の給料を正規社員の給料と同じにするため底上げする。
②正規社員の給料を非正規社員の給料とあわせるため下げる
①の場合だと、非正規社員からするとありがたい話ですが、会社からすると今までよりも人件費が上がってしまい、これにより生産性が向上し会社の売上が上がればいいのですが、今までと同じ売上の場合には、経費が増えるだけで経営を圧迫させるリスクが増えます。
②の場合だと、正社員は給料が低くなるので会社を退職する可能性が出てきます。
そもそも仕事内容が同じで給料が下がるということは、労働者にとっては不利益な取り扱いになり、労働契約法の不利益変更に抵触する可能性もでてきます。

労働契約法第9条に会社は労働者に合意なく不利益になるような労働条件の変更は基本的にはできないと定められています。
チーム力が低下し、教育が不十分になる可能性あり
2つの問題として、この制度は仕事の内容によって決まるので、前提としてその仕事ができる能力が必要になります。
つまり今後、成果主義の給料体系になりやすくなります。
成果主義だと能力が高い人は給料が多くもらえるのでいいのですが、能力がない人は給料が低くなります。
年功序列や終身雇用の場合だと、勤続年数に応じて給料があがっていくシステムなどで教育を十分に受けることができ、勤続年数に応じて仕事の幅が広がっていきます。
しかし、成果主義が進行しすぎる場合は次のようなケースが起こるのではないかと私は危惧しております。
①上司が部下への教育をしなくなる。
②個人での成果を求めることを優先し、組織として動かなくなる
①の場合は部下に仕事を教えることにより仕事を取られてしまい、自分の給料が減ってしまうと考える人が出てきて、部下への教育をしなくなるのではないかと私は思っています。
②の場合だと、個人としての成果を求めるあまり、チームでの行動を度外視した動きになってしまい会社の組織力が低下してしまうのではないかと考えています。
また会社というのは長期的な利益を目指しているのに対して、成果主義の過度な進行は、短期的な自分の利益を求めやすくなるので、会社にとってマイナスな影響をもたらすのではないかと思っています。
企業がとるべき施策

現状把握
では最後にこの制度に対応していくために企業として取り組まなければならないことを簡単に説明していきます。
まず、初めにしなければならないことは、当たり前のことですが会社内の正規社員と非正規社員の人数の把握と、各社員の給料の内容や計算方法を確認する必要があります。
そして、内容を確認し正規社員と非正規社員で待遇差があった場合には、それを解消していく必要があります。
役割を明確にする
仮に、非正規社員が正社員と同じ仕事をしている場合には、正社員に登用するなどの対策を立てなければなりません。
また非正規社員のまま働いてほしい場合には、正社員と仕事内容をしっかりと区分し、また責任の程度を正規社員に比べて少なくするなど明確にする必要があります。
就業規則や社内規定の変更と説明の強化
方向性がある程度決まったら、今度はそれを会社内のルールに落とし込み、整備する必要があります。
具体的には、トラブルを回避するために就業規則の変更や社内規定を作りなおし、ルールを明文化させる必要があります。

労働者の給料、賞与、福利厚生、教育訓練などの待遇について規定する必要があります。
そして、規定を作るだけでは不十分であり、それを社員さんに対してしっかりと説明する必要があります。
この制度は非正規社員から待遇差について説明を求められた場合には、会社としてきちんと説明しなければなりません。
説明をすることで社員さんも納得して会社で働くことができるので必ず説明義務を果たしましょう。
そして雇入れ時には必ず、労働者の待遇について説明するようにして下さい。
規定を自分で変更するのが難しい社長さんは社労士や弁護士等の専門家を使うことを検討するのもいいと思います。
違反したらどうなる
ここまで話を聞いて、この制度を違反をしたらどうなるの?
という質問が聞こえてきそうなので先に結論を申し上げます。
「違反しても企業としての罰則はない」のです
ここまでつらつらと書いてきましたが、実はこの制度に罰則がなく法的拘束力もありません。
罰則がないなら、待遇がよくならないじゃないの?

確かに、罰則がないのは事実なのですが、違反すると会社には別のリスクがあります。
それは、
「損害賠償を請求される」可能性があります。
実際に不合理な待遇差を受けたことで、労働者が会社に対して裁判を起こしたケースがたくさんあるのです。
その場合に会社が不合理な扱いをしていた場合には、判決が出て会社が労働者に対して多大な損害賠償をお支払いしています。
ですので、会社はこの制度をしっかりと理解して運用していく必要があります。
まとめ:労働環境を良くすることで生産も上がり会社として発展する
いかがでしたでしょうか?
ここまで読んでくださった方はある程度、同一労働同一賃金について理解できたのではないでしょうか。
それではまとめに入ります。
同一労働同一賃金のまとめ
同一労働同一賃金は同じ仕事の内容の労働者に給料の差はつけてはいけない制度
2021年4月から中小企業も対象になっている
日本型雇用3種の神器は❶終身雇用❷年功序列❸企業別労働組合でそのおかげで経済成長を達成できた
少子高齢化等の問題を抱える今の日本には3種の神器が通用しなくなってきた
同一労働同一賃金のメリットは労働意欲や生産性の向上や雇用機会の増加が期待できる
同一労働同一賃金のデメリットは人件費高騰で経営難や、組織力が低下する恐れがある
企業がとる施策は現状把握、役割を明確にしたり、就業規則等を変更し説明を強化する
労働環境というのは、労働者さんにとって本当に大事なものです。
この環境を会社としてより良い状態に整備することで、社員さんは気持ちよく働くことができ、そして結果として会社の生産性も上がり、会社として発展していくのではないかと私は考えています。
そして、各会社が成長することで日本経済も昔のように成長していくことを僕は願っております。
少しでもこの記事が参考になれば嬉しいです。